第9章 ⑤
第9章 完成
私は切り株を見る。
職人を見る。
そして言った。
「根っこ」
職人は黙った。
しばらく黙った。
やがて諦めたように溜息を吐く。
「裏返せ」
私は頷く。
切り株を転がした。
職人は鋸を持ってくる。
そして根っこを切り始めた。
ギコ。
ギコ。
木屑が落ちる。
私は見ていた。
面白かった。
やがて。
最後の根が落ちる。
職人は言った。
「終わりだ」
私は切り株を見る。
良い。
かなり良い。
未来のまな板だった。
「貸して」
私は近くに置いてあった道具を指差した。
職人が顔をしかめる。
「カンナか」
「うん」
「使えるのか」
私は少し考える。
そして正直に答えた。
「知らない」
職人は天を仰いだ。
私はカンナを借りる。
切り株の上へ置く。
引く。
シュッ。
木が削れた。
おおおお!私は感動した。
もう一回やる。
シュッ。
削れた。
ふふふ、面白い。
もう一回やる。
シュッ。
うむ、満足満足。
綺麗だった。
とても
木工職人は満足していなかった。
私は切り株を見る。
うむ良いまな板だ。
職人を見る。
「いくら?」
職人は少し考えた。
切り株を見る。
私を見る。
もう一度切り株を見る。
そして言った。
「鉄貨一枚」
私は頷く。
払う。
安かった。
多分。
私は切り株を抱える。
重い。
でも持てる。
問題無かった。
「ありがとう」
職人は何とも言えない顔をした。
私は気にしない。
良いまな板だった。
未来のまな板だった。
いや。
もう未来ではない。
まな板だ。
私は満足して洞窟に帰る。
木工職人は少し納得していなかった。




