閑話 納豆
閑話 納豆
翌朝だった。
私は朝ご飯の準備をしていた。
卵を取り出す。
ベーコンを取り出す。
フライパンへ入れる。
じゅうううう……
良い音がした。
良い匂いもした。
兄が起きる。
妹も起きる。
犬も起きる。
皆近付いて来る。
朝だった。
やがて完成する。
ベーコンエッグだった。
兄へ渡す。
妹へ渡す。
犬にも少し分ける。
かなり喜んだ。
良い事だった。
次に私は納豆を取り出した。
兄が固まる。
妹も固まる。
犬も固まる。
私は少し考えた。
主人公は思った。
納豆だった。
私は蓋を開ける。
兄が言った。
「外」
私は顔を上げる。
「え?」
兄は真顔だった。
「外」
妹は頷いた。
犬も頷いた。
私は少し考えた。
主人公は思った。
納豆だった。
私は外へ出た。
岩へ座る。
納豆を混ぜる。
ぐるぐる混ぜる。
糸が引く。
良い感じだった。
主人公は思った。
納豆だった。
私は食べる。
美味しかった。
その時だった。
「失礼」
声が聞こえた。
顔を上げる。
商人だった。
私は少し考えた。
主人公は思った。
嫌だった。
商人は笑顔だった。
「少しお話を――」
そこで止まった。
商人は納豆を見る。
私を見る。
納豆を見る。
もう一度私を見る。
私は納豆を食べる。
商人は少し後ろへ下がった。
主人公は思った。
身体に良かった。
商人はしばらく黙る。
そして言った。
「失礼した」
帰った。
かなり急いでいた。
私は納豆を見る。
主人公は思った。
美味しかった。
洞窟の入口を見る。
兄が居た。
妹も居た。
犬も居た。
皆こちらを見ている。
兄は納豆を見る。
商人が帰った方を見る。
私を見る。
しばらく考えた。
そして言った。
「便利だな」
私は頷く。
「身体に良い」
兄は違う事を考えていた。
◇
その頃。
商人は歩いていた。
かなり早足だった。
少し離れてから立ち止まる。
そして振り返った。
洞窟はもう見えない。
商人は小さく息を吐いた。
あの女は分からない。
本当に分からない。
コルンポップ。
シチュー。
魚汁。
どれも売れた。
だからこそ分からない。
今日見た物は何だったのか。
豆だった。
多分。
だが糸を引いていた。
見た目も良くなかった。
匂いも独特だった。
それを女は平然と食べていた。
商人は洞窟の方を思い出す。
兄が居た。
妹も居た。
犬も居た。
誰も近付いていなかった。
商人は少し考える。
かなり考える。
そして結論を出した。
今日はやめて正解だった。
契約は逃げない。
だが。
まずはあれが何なのか調べるべきだった。
商人は歩き出す。
難しい仕事になりそうだった。




