閑話 商人達の噂
閑話 商人達の噂
下町の広場だった。
兄はいつも通り荷物を運んでいた。
その途中。
聞き慣れた話題が耳へ入る。
最近有名な屋台の話だった。
商人が言う。
「コルンポップは売れてるらしいな」
別の商人が頷く。
「ああ」
「かなり売れてる」
兄は少しだけ足を止めた。
知っている話だった。
商人達は続ける。
「だが妙なんだ」
「妙?」
「再現出来ない」
兄は黙って聞いていた。
商人は腕を組む。
「作り方は聞いた」
「鍋へ入れる」
「蓋をする」
「火に掛ける」
「振る」
「それだけだ」
別の商人が頷く。
「簡単そうだな」
「簡単だ」
「だが出来ない」
兄は少し考えた。
みーなら。
「コルンだから」
と言いそうだった。
商人達は続ける。
「それだけじゃない」
「魚汁もだ」
兄は少し嫌な予感がした。
「魚は分かる」
「野菜も分かる」
「だがあの味が分からん」
「白い汁もそうだ」
「鳥は分かる」
「野菜も分かる」
「だが何故白くなる」
商人達は真剣だった。
かなり真剣だった。
兄は少し考えた。
みーなら。
「シチューだから」
と言いそうだった。
商人達は続ける。
「本人に聞くか」
「聞いた」
「何て?」
「適当」
商人達が静かになる。
兄も少し静かになった。
主人公なら言う。
そういう気はした。
やがて商人の一人が言った。
「囲えないか」
兄は固まった。
別の商人が頷く。
「囲いたいな」
「囲いたい」
「囲いたい」
兄は遠い目をした。
無理だと思った。
みーはそういう話を嫌がる。
かなり嫌がる。
理由は分からない。
でも分かった。
絶対に逃げる。
兄は荷物を持ち直す。
そして歩き出した。
商人達はまだ話している。
兄は思った。
聞いても分からないと思う。




