第50章 ③
翌朝、朝ご飯を片付けていると、孫がやってきた。
「おばさん」
「何?」
「そといく」
昨日の今日だった。
私は手を止める。
「誰と?」
「おかあさん」
見ると、玄関でサラが支度をしている。
「畑まで連れていくね」
「分かった」
孫を見る。
「ちゃんと言えたね」
「うん!」
得意そうだった。
昨日あれだけ泣いたのだから、覚えていたらしい。
「じゃあ行ってらっしゃい」
「いってきます!」
走っていく。
「走らない!」
「はーい!」
元気な返事だけが返ってきた。
多分、走っている。
まあいい。
一人で外へ出るのと、母親と一緒に走るのは別だ。
私は食器を片付けた。
ルークはもう出かけている。
ニコも代官府へ行った。
静かになった家で洗濯をして、少し編み物をする。
眼鏡をかける。
よく見える。
便利だ。
買ってよかった。
昼前。
サラと孫が帰ってきた。
「ただいま!」
「おかえり」
孫の手には何かある。
「なに、それ」
「いし」
見れば分かる。
「どうするの?」
「もってる」
それは答えになっていない。
サラが笑った。
「畑の帰りに拾ったの。ずっと持ってる」
「ふうん」
宝物らしい。
昼ご飯にする。
昨日のスープが少し残っていたので、野菜を足した。
パンも出す。
孫は石をテーブルに置こうとした。
「石は駄目」
「なんで?」
「外にあったから」
「きれいだよ」
「洗っても石は石です」
石は窓辺に置かれた。
不満そうだったが、ご飯を食べ始めれば忘れた。
食べ終わる頃には、目をこすっている。
「眠い?」
「ねむくない」
あくびをした。
サラが笑う。
「眠そうだよ」
「ねむくない」
もう一度あくびをする。
「寝てきなさい」
私が言うと、孫がこちらを見る。
「おばさんも」
「私は眠くないよ」
「いっしょ」
「寝かせるだけね」
「うん」
仕方ない。
私の部屋へ行く。
ベッドに孫を寝かせて、その隣に横になる。
イナまでついてきた。
ベッドの横で伏せる。
「イナは寝るの?」
尻尾が一度動いた。
孫が私の腕にくっつく。
「狭い」
少し離す。
戻ってくる。
「狭いって」
また離す。
また戻ってくる。
諦めた。
背中を軽く叩く。
「寝なさい」
「ねむくない」
「はいはい」
目はもう閉じている。
ぽん。
ぽん。
少しして、寝息が聞こえ始めた。
「寝たじゃない」
返事はない。
私も目を閉じる。
寝かせるまでと思って横になったけれど、ベッドは暖かい。
少しくらいなら、いいか。
そのまま眠った。




