第50章 ①
朝。目が覚めた。
少し寒い。
布団から出る。
顔を洗う。
髪をまとめる。
鏡を見る。
白髪が増えた。
まあいい。
台所へ行く。
火をつける。
昨日の残りのスープを温める。
パンを切る。
卵も焼く。
カルト芋も蒸す。
これはニコの分。
多分、孫も食べる。
匂いがしたのか、イナが来た。
「まだだよ」
座った。
偉い。
目は芋を見ている。
やっぱり偉くない。
二階から音がする。
ルークが起きたらしい。
その後で、サラの声が聞こえた。
「駄目!」
朝から何だ。
少しして、孫が走ってきた。
手に何か持っている。
布。
「それ何?」
後ろからサラが来る。
「私の!」
孫が逃げた。
「朝から走らない!」
サラも追う。
元気だ。
ニコが来た。
眠そうだ。
「おはよう」
「おはよう」
席に座る。
蒸したカルト芋を置く。
「ありがとう」
まだ好きらしい。
三歳の時から変わらない。
ルークも来る。
全員揃った。
「食べな」
朝ご飯にする。
今日の予定を聞く。
サラは畑。
ニコは代官府。
ルークはギルドへ行く。
仕事があれば受けるらしい。
私は買い物。
糸も見たい。
今使っているものが少なくなってきた。
「また編むの?」
ルークが聞いた。
「編むよ」
「何作ってるの?」
「まだ決めてない」
「決めないで編んでるの?」
「途中で決める」
そういう時もある。
眼鏡があるから細い糸も使える。
便利だ。
食事が終わる。
ニコが出る。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
サラも準備をする。
「お昼までには戻るね」
「無理しなくていいよ」
「分かってる」
ルークも立つ。
「夕飯いる?」
聞く。
「いる」
「遅くなるなら連絡して」
「分かってる」
いつものことだ。
三人が出ていく。
家が少し静かになる。
孫は残っている。
静かではなかった。
イナもいる。
もっと静かではない。
私は食器を片づける。
洗う。
干す。
洗濯物もある。
買い物にも行く。
昼ご飯も作る。
編み物もしたい。
やることは多い。
孫が椅子を動かしている音がした。
手を止める。
「何してるの?」
音が止まった。
返事がない。
怪しい。
見に行く。
椅子の上に立っていた。
棚へ手を伸ばしている。
「降りなさい」
「もうちょっと」
「もうちょっとじゃない」
抱えて下ろす。
「何取りたかったの?」
指を差す。
箱。
眼鏡が入っている。
まだ狙っていた。
「これは駄目」
「みるだけ」
「駄目」
「ちょっと」
「駄目」
賢くなった。
交渉するようになった。
面倒だ。
箱をもっと奥へ置く。
孫が見ている。
置き場所を覚えている顔だ。
「覚えなくていいよ」
笑った。
絶対に覚えた。
私はため息をつく。
さて。
洗濯を終わらせよう。
それから買い物。
帰ってきたら昼ご飯。
午後は編み物。
夕飯は何にしよう。
いつもと同じ朝だった。




