第49章 ②
翌日。
医者に来た。
ニコもいる。
仕事へ行く前に時間を作ったらしい。
「一人で来られるよ」
「知ってる」
なら何でいる。
医者に昨日からのことを話す。
近くが見えにくい。
離すと見える。
遠くは普通に見える。
痛くもない。
医者は私の目を見た。
片方ずつ確認する。
少し離れたところにあるものを見せられる。
見える。
今度は文字。
近い。
見えにくい。
少し離される。
見える。
やっぱり。
「目そのものに悪いところはなさそうですね」
「じゃあ、歳?」
「そうですね。年齢を重ねると、近くのものが見えにくくなる人はいます」
やっぱり老眼だった。
「治る?」
「年齢によるものですからね」
そうだよね。
知ってた。
少し残念だけど。
でも病気ではない。
それならいい。
「編み物は?」
「できますよ」
よかった。
一番大事なことを確認した。
ただ、見えにくいものは見えにくい。
そこは変わらない。
どうしよう。
太い糸だけにするか。
細かいものは昼間だけにするか。
明るいところなら、まだかなり見える。
考えていると、医者が言った。
「近くを見る時だけ、眼鏡を使ってもいいでしょう」
私は医者を見た。
「あるの?」
医者が少し不思議そうな顔をした。
「ありますよ」
あるのか。
「近くを見るための?」
「はい」
私はニコを見た。
ニコは普通の顔をしている。
「知ってた?」
「知ってるよ」
「先に言ってよ」
「聞かれてないから」
そうだけど。
「代官府にも使ってる人いるよ。細かい文字が見えにくくなった人が」
いるのか。
昨日、三人であんなに心配していたのは何だったのだろう。
「どこで買える?」
医者に聞く。
教えてもらった。
少し値段はするらしい。
問題ない。
昔なら考えた。
今なら買える。
編み物ができなくなる方が困る。
医者に礼を言って外へ出る。
ニコはこのまま仕事へ行くらしい。
「おばさん、家に帰る?」
「眼鏡買ってくる」
「今から?」
「今から」
必要なものは早く買う。
「一人で大丈夫?」
「目以外は元気だよ」
「それは分かってるけど」
「仕事行きな」
ニコを追い払った。
教えてもらった店へ向かう。
近くを見るための眼鏡。
ちゃんとあるらしい。
よかった。
異世界に来ても、老眼からは逃げられなかった。
でも。
眼鏡はあった。
それなら問題ない。




