第48章 ⑧
赤ちゃんができた。
それでも、結婚式はするらしい。
「いつ?」
夕飯の後に聞いた。
「来月くらい」
ニコが答えた。
「早いね」
「お腹が大きくなる前の方がいいかなって」
なるほど。
サラを見る。
まだ見た目はほとんど変わらない。
食べられるものには少し偏りがあるけれど、最初の頃よりは落ち着いてきた。
「サラはそれでいいの?」
「うん。大きい式じゃなくていいし」
それならいい。
本人たちが決めたなら、それでいい。
「どこでするの?」
「ギルドの広間を借りようかと思ってる」
私は少し驚いた。
「ギルド?」
「商会でもいいってカイルが言ってたけど、人が多くなるから」
サラが指を折り始めた。
「カイルたちでしょ。ミラたちでしょ。お兄ちゃんとダンとエリオ。畑の人たち」
「代官府の人たちも何人か」
ニコが付け足した。
増えていく。
「商人も呼ぶ」
それも当然らしい。
「ギルドマスターも来るって」
さらに増えた。
小さい式とは何だろう。
「それ、小さい?」
「小さいよ」
サラが答えた。
そうなのか。
この世界の基準は分からない。
私は人数を考えながら、ふと一人の顔を思い出した。
おばちゃんにも見せたかった。
カイルとミラとニコを見つけて、この家へ連れてきた人だ。
あの時、ニコは三歳だった。
小さくて、お腹を空かせていた。
サラも三歳だった。
同じ年なのに、ニコの方が小さく見えた。
カルト芋を渡したら、サラが隣に座った。
落とした芋をイナに食べられて、それからサラはニコの芋を守るようになった。
あの二人が結婚する。
赤ちゃんまでできた。
おばちゃんがいたら、何と言っただろう。
多分、驚いて。
その後で笑ったと思う。
でも、もういない。
少し残念だ。
「おばさん?」
サラに呼ばれた。
「何?」
「聞いてた?」
「聞いてたよ」
多分。
話を戻す。
「グライナー家には知らせるの?」
ルークが聞いた。
少しだけ空気が変わった。
ニコはすぐに頷いた。
「知らせるよ」
「来るの?」
「分からない」
それだけだった。
ニコがあの家の血を引いていることは変わらない。
でも、戻らないと決めたことも変わらない。
知らせる。
来るかどうかは向こうが決める。
それでいいと思う。
「服は?」
私が聞くと、サラが笑った。
「ミラが作るって」
やっぱり。
「もう布も見てるよ」
いつの間に。
「ニコのも?」
「僕のも作るって」
「お兄ちゃんのは?」
サラが聞いた。
ルークが顔を上げる。
「俺?」
「その服で来るの?」
ルークが自分を見る。
いつもの服だ。
「駄目?」
「駄目」
「何で?」
「結婚式だから」
ルークが私を見る。
知らない。
私は助けない。
「ミラに聞きな」
「面倒だな」
「着るだけでしょ」
「採寸される」
そこか。
私は笑った。
式の日は来月。
場所はギルド。
服はミラ。
料理はまだ決まっていない。
呼ぶ人も、もう少し増えるかもしれない。
二人は紙に何か書きながら相談している。
ルークも途中から口を出していた。
さっきまで採寸が嫌だと言っていたのに。
私は少し離れたところで編み物をする。
しばらくして、サラが私を呼んだ。
「おばさん」
「何?」
「おばさんも服、作るからね」
手が止まった。
「私も?」
「当たり前でしょ」
「今のでいいよ」
「駄目」
ルークと同じことを言われた。
「何で?」
「結婚式だから」
逃げられないらしい。
ミラに採寸されることになった。
面倒だ。
でも。
少し楽しみでもある。
言わないけど。




