表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/322

閑話 勇者は戻る

町へ続く街道を二人の男が歩いていた。


一人は大きな剣を背負っている。


足取りは軽い。


もう一人は、何も背負っていない。


だが。


足取りは重かった。


「遅いよ」


アルトが振り返る。


元副官は顔を上げた。


「誰のせいだと思っている」


「酒を飲みすぎたからだろ?」


「お前の連れが飲ませたんだ」


「ラセルは無理に飲ませないよ」


「杯が空になるたび注いでいたぞ」


「飲んだのは自分だろ?」


元副官は黙った。


腹が立つほど正しかった。


アルトは前を向く。


「もう少しだよ」


遠くに町の門が見えている。


元副官の足が止まった。


アルトも止まる。


「どうした?」


「……今なら」 


元副官が街道の脇を見る。


森がある。


走れば隠れられる。


「今なら、何?」


「いや」


元副官は再び歩き出した。


アルトが隣へ並ぶ。


「逃げてもいいよ」


元副官がアルトを見る。


「追いかけるけど」


「捕まえないと言っただろう」


「捕まえないよ」


アルトは笑う。


「追いついて、また一緒に歩く」


元副官は額を押さえた。


昨日から頭痛が治らない。


町の門へ近付く。


衛兵が二人を見た。


最初にアルト。 


次に元副官。


元副官の顔を見て。


目付きが変わった。


「止まれ」


槍が向けられる。


元副官は止まった。


アルトも止まる。


「この人を連れてきた」


「何者だ」


「王都中央研究所の偉い人の副官」


元副官が低い声で訂正する。


「元だ」


「昨日、仕事を辞めさせられた」


「解任だ」


「同じじゃないの?」


「違う」


衛兵は二人を見比べた。


「何の用だ」


アルトは元副官を見る。


「何だっけ?」


「お前は何も聞いていなかったのか」


「聞いてたよ」


「なら説明しろ」


「悪いことをしたから、話しに来た」


短かった。


間違ってはいない。


だが足りなかった。。


元副官は諦めたように息を吐く。


懐から書状を出した。


次に小さな手帳を出す。


「中央研究所統括官から地方研究所へ出された指示について、証言する」


衛兵の顔が変わった。


すぐに、もう一人を見る。


「ギルドへ知らせろ」


衛兵が走る。

元副官は門を見上げた。


戻ってきた。


昨日まで視察をしていた町。


子供達の記録を確認し投薬量を増やせと伝え、署名を消せと命じた場所。


今度は証言するために。


門が開いた。


「行こう」


アルトが歩き出す。


元副官は動かない。


「どうした?」


「私は拘束される」


「うん」


「裁かれるかもしれない」


「うん」


「分かっているのか?」


「分かってるよ」


アルトは元副官を見る。


「悪いことをしたんだろ?」


「ああ」


「じゃあ、ちゃんと話さないと」


やはり単純だった。


逃げ道がなかった。


元副官は門をくぐった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ