第34章 ⑳
自分で。
言った。
死んだ子供がいることを。
認めた。
薬師がゆっくり立ち上がる。
「何人だ」
所長の顔から汗が落ちる。
「薬の副作用だ」
「何人」
「中央が決めた投与だ」
「何人だ」
「元から弱っていた子もいる!」
「名前を聞いていない」
薬師は所長を見る。
「人数を聞いている」
所長の口が震える。
一度。
二度。
開いて。
閉じる。
「……七人」
小さな声だった。
でも。
聞こえた。
全員に。
「七人?」
私が聞くと。
所長は首を振った。
違う。
七人ではない。
「今年は」
薬師の声が。
もっと低くなる。
「今年は七人か」
所長は答えない。
「全部で何人だ」
ギルドマスターが聞く。
副所長が俯いた。
そして。
所長より先に答えた。
「二十三人だ」
誰も動かなかった。
二十三人。
二十三人の子供。
泣いた。
苦しかった。
帰りたかった。
でも。
帰れなかった。
「地下に?」
私は聞いた。
副所長が頷く。
「埋めたの?」
もう一度。
頷いた。
所長が叫ぶ。
「中央の指示だった!」
衛兵に押さえられながら。
何度も言う。
「死亡が知られれば研究が止まる!」
「中央から隠せと言われた!」
「私は従っただけだ!」
ギルドマスターは所長を見る。
「今の言葉」
衛兵へ向く。
「一言も漏らすな」
筆が動く。
所長は息を切らしている。
ようやく気付いた。
自分が。
何を言ったのか。
でも。
もう遅い。
子供の死亡を把握。
遺体を地下へ埋葬。
記録を処分。
中央研究所から隠蔽指示。
所長が自白。
全部。
紙に残った。
燃やせない紙。
消せない言葉。
私は地下へ続く扉を見る。
今まで。
誰も開けなかった扉。
鍵は。
所長の腰に下がっている。
ギルドマスターが鍵を取った。
「地下を確認する」
所長は何も言わない。
もう。
言い訳も出てこない。
ギルドマスターは冒険者と衛兵を見る。
「薬師を連れて行け」
それから。
私を見る。
「お前はここにいろ」
私は頷いた。
行かない。
行けない。
今は。
生きている子供達のそばにいる。
地下の子供達は。
町の人が。
きちんと迎えに行く。
名前を探す。
番号ではなく。
一人ずつ。
ギルドマスターが扉へ向かう。
鍵を差し込む。
重い音がした。
所長は。
その音を聞いていた。
地下の扉が開く。
隠したものが。
全部。
外へ出る。
もう。
誰も。
無かったことにはできない。




