第34章 ⑱
商人が笑う。
今度は。
本当に怖い顔だった。
「何故消した」
「中央との関係を知られないためだ」
「誰に?」
「外部の者に」
「今日のような時にか」
所長は答えない。
「研究所へ調査が入った時」
ギルドマスターが聞く。
「中央からの指示ではなく、地方研究所が独自に行ったように見せるためか」
「違う」
「なら何だ」
「中央から、消すよう連絡があった」
部屋が静かになった。
「書面か」
「口頭だ」
「誰が伝えた」
「統括官の補佐官だ」
「いつ」
「三日前」
三日前。
私達が。
仲介人を捕まえた後。
研究所のことを。
町が知り始めた頃。
「調査が来ると、中央は知っていたのか」
「可能性があると」
「誰から聞いた」
「補佐官は言わなかった」
「どうやって連絡が来た」
「魔導通信だ」
「通信記録は?」
所長は黙る。
ギルドマスターが立ち上がった。
「通信室を押さえろ!」
冒険者と衛兵が走る。
廊下の奥で。
何かが倒れる音がした。
次に。
怒鳴り声。
「火を消せ!」
全員が振り返る。
黒い煙が。
廊下の奥から流れてきた。
通信室。
誰かが。
記録を燃やそうとしている。
所長の顔が。
青くなった。
「私は命じていない」
誰も聞いていないのに。
自分から言った。
ギルドマスターが所長を見る。
「では、誰が燃やしている」
「分からない」
「副所長か」
「分からない!」
「中央からの命令か」
「知らない!」
所長の声が。
初めて裏返った。
「私は言われた通り、署名を消しただけだ!」
言った。
はっきりと。
衛兵の筆が止まる。
すぐに。
また動き出す。
中央研究所統括官補佐から。
魔導通信で指示を受け。
証拠となる署名を削除。
所長は自分の口から。
全部言った。




