第34章 ⑪
所長がそれを見る。
少しだけ。
嫌そうな顔をした。
「子供を集めろという指示も、中央から来たの?」
私は聞いた。
所長はこちらを見る。
「研究に必要な人数が示された」
「何人?」
「年度によって違う」
「今年は?」
答えない。
商人が帳面を開いた。
「二十四人だ」
所長の目が動く。
商人は別の紙を重ねる。
「昨年は十八人」
次。
「その前は十五人」
もう一枚。
「毎年、増えているな」
「研究の範囲が広がった」
「子供が増えたんじゃない」
商人の声が低くなる。
「集める数を増やしたんだ」
所長は何も言わない。
「二十四人いないと、どうなるの?」
私が聞くと、男は視線を逸らした。
「研究計画が達成できない」
「達成できないと?」
「中央から指導が入る」
「叱られる?」
「地方研究所の評価が下がる」
評価。
子供を集められないと。
評価が下がる。
「お金は?」
商人が聞いた。
所長は答えなかった。
商人が帳面の一か所を指す。
「研究体一名につき、管理費が支給されている」
所長の顔から。
少しだけ色が消えた。
「子供を一人連れてくると」
商人が続ける。
「中央から金が出るんだな?」
「管理に必要な費用だ」
「一人いくらだ」
「年齢と魔力量によって違う」
答えた。
自分で。
商人が笑った。
笑っているのに。
怖かった。
「年齢と魔力量で値段が違うのか」
「必要な薬品も食料も違う」
「三歳はいくらだ」
所長の喉が動く。
「帳面にあるぞ」
商人が紙を捲った。
「幼年区分。魔力未発現」
指で追う。
「銀貨十二枚」
次。
「魔力発現済み」
止まる。
「銀貨二十五枚」




