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第34章 ⑩ 

机の上に指示書が置かれている。


一番下。


所長の印。


ギルドマスターは、その印を指で叩いた。


「お前のものだな」


所長は紙を見た。


「そうだ」


認めた。


でもそれだけだった。


「何を承認した」


「中央研究所から届いた研究計画だ」


「中身を読んだか」


「当然だ」


「なら話が早い」


ギルドマスターが指示書を開く。


「投与量の増加」


一枚。


「魔力反応が戻った場合の再投与」


次。

「拒否した研究体への強制投与」


次。

「体調不良に関する記録の選別」


最後。


「全部、お前が承認している」


所長は表情を変えなかった。


「中央の計画を受け入れただけだ」


「受け入れないことはできたか」


「できない」


「本当に?」


「地方研究所に拒否権はない」


ギルドマスターが指示書を持ち上げる。


「ここに書いてある」


所長の顔が動いた。


「実施困難な場合は、理由を添えて返送できる」


指示書を男へ向ける。


「返せたんじゃないか?」


所長は黙った。


「何故、返さなかった」


「実施可能だと判断した」


「誰が?」


「私だ」


言った。


所長が。


自分で。


「では、お前の判断だな」


「計画を作ったのは中央だ」


「受け入れたのは?」


所長の口が止まる。


ギルドマスターがもう一度聞く。


「誰だ」


「……私だ」


衛兵の筆が動いた。

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