第34章 ⑨-4
薬師の声がその言葉を切った。
誰も喋らない。
責任者だけが息をしている。
少し荒い。
私は男を見る。
「止められたんだね」
「最終的な決定権は――」
「一度止めた」
「一時的にだ」
「四が無理だと言った」
「現場の判断は――」
「三も聞いた」
「投与担当に医学的判断はできない」
「六も聞いた」
「補助員の意見だ」
全部。
自分より下だから聞かなかった。
子供だからもっと聞かなかった。
「薬師には相談したの?」
私は町の薬師を見る。
それから研究所の薬剤師を見る。
「投与を止めるべきか」
「誰かに聞いた?」
責任者は答えない。
研究所の薬剤師も。
目を逸らした。
「聞いてないんだ」
知りたくなかった。
多分。
聞いてしまったら。
止めなければならないから。
「責任者って」
私は胸の札を見る。
「何をする人なの?」
男は何も言わない。
「決める人?」
答えない。
「確認する人?」
答えない。
「止める人?」
答えない。
「何かあった時に下の人へ責任を渡す人?」
男が私を見る。
「私は職務を果たした」
「どんな?」
「投与計画を管理した」
「子供が吐いても?」
「規定に従った」
「血が出ても?」
「実施者の問題だ」
「やめてって言っても?」
「必要な処置だった」
「死にそうになっても?」
「所長へ報告した」
私は頷いた。
やっぱり。
この人は何もしていないと言いたい。
でも。
薬を止めた。
再開した。
人を集めた。
押さえさせた。
飲ませた。
報告を聞かなかった。
全部この人がした。
ギルドマスターが衛兵へ向く。
「書け」
衛兵が筆を構える。
「投与責任者は、対象児の発熱、嘔吐、食事不能を把握していた」
筆が動く。
「一時停止後、自ら再開を承認」
次。
「現場担当者から中止を求める報告を受けながら、投与続行を指示」
次。
「拒否した子供を拘束する人員を配置」
次。
「泣こうが吐こうが飲ませろと命じた」
責任者が机を叩いた。
「私は最終責任者ではない!」




