第34章 ⑨-3
自分より下へ投げた。
四の札の顔が歪む。
「私は言った!」
声を上げる。
「あの子はもう無理だと!」
責任者の目が動いた。
「何を?」
ギルドマスターが四の札を見る。
「吐いた後だ」
「体に力が入っていなかった」
「押さえなくても動けないくらいだった」
「それでもこいつが飲ませろと言った!」
責任者が口を開く。
「記録にない」
「書かせなかっただろ!」
四の札が叫ぶ。
「投与に関係のない意見は要らないと言った!」
部屋の空気が。
また変わる。
ギルドマスターが衛兵を見る。
「記録しろ」
筆が動く。
責任者が手を上げた。
「待て。事実か確認されていない」
「今、確認する」
ギルドマスターが責任者を見る。
「言ったのか」
「覚えていない」
「では、投与を拒む報告はなかったのか」
「現場の者は頻繁に弱音を吐く」
子供がもう無理だという報告を。
弱音。
「三」
ギルドマスターが呼ぶ。
三の札が肩を揺らす。
「お前は聞いたか」
男は責任者を見る。
「答えろ」
「……聞いた」
「何を」
「四が、中止した方がいいと言った」
「責任者は?」
「予定通り投与しろと」
責任者の顔から。
少しずつ色が消える。
「六もいた」
四の札が廊下を見る。
冒険者が動く。
六の札の男を連れてくる。
男は周りを見た。
そして俯いた。
「聞いたか」
ギルドマスターが聞く。
「聞いた」
「責任者は何と言った」
「規定量に達していない」
「それだけか」
六の札は唇を噛んだ。
「泣こうが吐こうが」
一度息を吸う。
「飲ませろと言った」
薬師の手が。
机の上で握られた。
責任者が声を上げる。
「投与を完了させる必要があった!」
「何故」
薬師が聞く。
「魔力反応を抑えるためだ」
「何故、その日に抑える必要があった」
「観察値に影響する」
「次の日では駄目だったのか」
「条件が変わる」
「子供の体より」
薬師は責任者を見る。
「記録の条件が大事だったのか」
男は答えない。
「吐いている子へ無理やり飲ませたのは」
薬師が記録を持ち上げる。
「治療のためでもない」
一枚。
机へ置く。
「子供を助けるためでもない」
一枚。
重ねる。
「正確な観察値を取るためだな」
責任者の口が動く。
「研究には必要な――」
「子供には必要ない」




