第34章 ⑨-2
部屋が静かになった。
私は男を見る。
「死にそうになるまでは続けるの?」
男は言葉を止めた。
「そういう意味ではない」
「今、そう言ったよ」
「死亡の危険がある場合は中止する規定だ」
「それまでは?」
答えない。
熱が出ても。
吐いても。
食べられなくても。
水も飲めなくても。
泣く力がなくなっても。
死にそうになるまでは続ける。
「誰が中止を決めるの?」
ギルドマスターが聞く。
「私が所長へ報告する」
「お前には止められないのか」
「一時的な停止はできる」
止められた。
私は男を見る。
「この子の薬、一度止まってる」
記録を指す。
「誰が止めたの?」
「私だ」
「止められるんだね」
「一時的なものだ」
「次の日に再開してる」
「魔力反応が戻った」
「誰が再開を決めたの?」
男は黙った。
ギルドマスターが紙を見る。
「再開承認」
その横に責任者の印。
「お前だな」
「所長へ報告した」
「再開を命じられたのか」
「継続の方針は確認した」
「命じられたのか」
男の目が所長へ向いた。
所長は少し離れた場所にいる。
衛兵に囲まれて。
こちらを見ていた。
「所長は継続すべきだと言った」
「それで?」
「再開した」
「お前が?」
「現場の責任者として」
言った。
自分で。
責任者。
私は頷く。
「責任者なんだね」
男の顔が強張る。
「最終的な決定権は所長にある」
「でも、薬を止めたのはあなた」
「一時停止だ」
「再開の印を押したのもあなた」
「方針に従った」
「三と四を動かしたのも?」
「投与の実施を指示した」
「六も?」
「必要な人員を配置した」
全部この人だった。
薬を渡せと言った。
食事へ混ぜろと言った。
食べなければ押さえろと言った。
口を開けろと言った。
吐いたら。
もう一度。
「子供を押さえるように指示したの?」
「安全に投与するよう指示した」
また安全。
私は四の札を見る。
「この人は」
責任者へ言う。
「顎を掴んだ」
「口を開けた」
「血が出た」
「それも安全?」
「手順に問題があったなら、実施者の責任だ」
四の札が顔を上げた。
「お前がやれと言った!」
「傷付けろとは言っていない」
「押さえなければ投与できなかった!」
「適切な力で行えと指示した」
「動くんだ! あれでは飲ませられな
い!」
責任者は四の札を見る。
「それを判断するのがお前の仕事だ」




