第6章 魚④
第6章 魚汁
私は発泡スチロールを置いた。
次にエコバッグを下ろす。
中から石を取り出した。
おばちゃんが見る。
石を見る。
私を見る。
もう一度石を見る。
「何だいそれ」
私は答えた。
「まな板」
おばちゃんは固まった。
「石だろ」
私は石を見る。
平らだった。
主人公は思った。
まな板だった。
私は石を置く。
ネギを取り出す。
ナイフも取り出す。
切る。
とん。
とん。
とん。
少し転がった。
拾う。
気にしない。
次に椎茸を取り出す。
切る。
少し曲がった。
気にしない。
主人公は思った。
切れれば良かった。
おばちゃんはしばらく見ていた。
そして言った。
「本当に石だね」
私は頷いた。
石だった。
鍋を下ろす。
水を入れる。
魚を入れる。
ネギを入れる。
椎茸も入れる。
火にかける。
ぐつぐつ。
しばらくすると良い匂いが広がった。
私は味噌を取り出す。
少し迷う。
そして入れた。
主人公は思った。
仕方ない。
魚も危険だった。
味噌も溶ける。
良い匂いが広がる。
近くを歩いていた男が足を止めた。
鍋を見る。
私を見る。
「何だそれ」
私は答えた。
「魚汁」
男は少し考える。
「魚汁?」
私は頷いた。
魚だった。
その横でフライパンを火にかける。
シシャモを並べる。
じゅうううう……
良い音がした。
良い匂いもした。
私は箸を取り出す。
シシャモをひっくり返す。
おばちゃんが見る。
「何だいそれ」
私は答えた。
「箸」
おばちゃんは少し考えた。
そして言った。
「手で良くないかい」
私は答えた。
「熱い」
おばちゃんは頷いた。
納得したらしい。
シシャモが焼ける。
私は一本取った。
食べる。
主人公は思った。
魚だった。
おばちゃんが笑った。
「売らないのかい」
私は答えた。
「いっぱいある」
おばちゃんは吹き出した。
「一本おくれ」
私は渡した。
おばちゃんも食べる。
私は魚汁をよそう。
客へ渡す。
またよそう。
また渡す。
魚汁は売れた。
シシャモも減った。




