第28章 ②
第28章② 準備
私は商人を連れて家へ戻る。
「何がいる」
「米」
商人が頷く。
「用意してある」
私は首を振る。
「後、鳥の餌って言わない」
商人が止まる。
「何?」
私は言う。
「米」
「今日から」
「米」
商人は少し黙る。
そして頷く。
「……分かった」
「米だな」
私は頷く。
「炊くと、ご飯」
「握ると、おにぎり」
商人は私を見る。
少し驚いた顔だった。
「今日はよく喋るな」
私は頷く。
「仕事だから」
商人は黙る。
そして少し笑った。
「そうか」
私は台所へ行く。
鍋を見る。
厚い鍋だ。
重い。
かなり重い。
でも今日はこれがいる。
私は鍋を持つ。
ちょっと重いな。
「カイル」
「ルーク」
二人が来る。
「カートに乗せる」
カイルがすぐ頷く。
ルークも鍋を見る。
「重い?」
私は頷く。
「重い」
「でも大事」
二人は顔を見合わせる。
カートの下の段へ乗せる。
がたん。
カートが少し沈んだ。
私は縄を持ってくる。
「動かないように」
カイルが縄を取る。
「縛ればいい?」
「うん」
カイルは慣れた手つきで鍋を固定する。
ルークも横を押さえる。
私は見る。
うん。
大丈夫。
多分。
ミラが来る。
「何を持って行きますか?」
私は指を折る。
「しゃもじ」
「木のお玉」
「布」
「水筒」
「器」
ミラは頷く。
すぐ動く。
仕事が早い。
丁寧だ。
頼りになる。
サラとニコも来る。
「いく?」
サラが聞く。
ニコも私を見る。
目が期待している。
私は少し考える。
人混み。
火のそば。
危ない。
でも留守番も危ない。
二人だけは駄目だ。
イナを見る。
イナはもう行く気だった。
尻尾が揺れている。
私は言う。
「行こうか」
サラの顔が明るくなる。
ニコも笑う。
「でも」
二人が止まる。
私はカートの上を見る。
「ここ」
サラが首を傾げる。
「ここ?」
「うん」
「町まで座る」
サラはカートを見る。
ニコも見る。
少し考える。
そして。
「のる!」
決まったらしい。
私は頷く。
「落ちない」
「立たない」
「手を出さない」
サラは真剣に頷く。
「うん」
ニコも頷く。
多分分かっていない。
「カイル、ルーク」
「仕事中目を離さないで」
二人共頷く。
ミラが布を敷く。
サラとニコを乗せる。
二人は少し嬉しそうだった。
荷物扱いではない。
多分。
イナがカートへ前足を掛ける。
私は止める。
「イナは歩く」
イナは私を見る。
不満そうだった。
「歩く」
イナは前足を下ろした。
えらい。
多分。
商人が外で待っていた。
カートを見る。
鍋を見る。
子供を見る。
犬を見る。
それから私を見る。
「……それで来るのか」
私は頷く。
「うん。安全」
商人は何か言いたそうだった。
でも言わなかった。
多分。
慣れたのだ。
私は聞く。
「塩」
「味噌」
「鉄板」
商人が頷く。
「用意してある」
「焼き網もある」
私は頷く。
準備は出来た。
カートの下に鍋。
上にサラとニコ。
横にイナ。
ルークとカイルとミラが歩く。
商人が前を行く。
私はカートを押す。
がらがら。
がらがら。
少し重い。
でも進む。
今日は。
鳥の餌を米にする日だ。




