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第25章 ➂
第25章③ 鍋
商人は私を倉庫へ連れて行く。
奥には鍋が並んでいた。
一つ。二つ。三つ。
全部厚い。
私は一つ持つ。
重い。
かなり重い。
私は少し笑う。
「いい」
商人が頷く。
「それは旅へ出る奴がよく使う鍋だ」
私は鍋を見る。
商人が続ける。
「火に掛けるだけじゃない」
「蓋も鉄で出来ている」
「その上へ炭を乗せる」
私は止まる。
「上も?」
商人は頷く。
「ああ」
「上下から熱が入る」
「肉の塊を焼くには最高だ」
「パンを焼く奴もいる」
「煮込みにも向いてる」
「重いが丈夫だ」
私は鍋を撫でる。
「ご飯」
商人は苦笑した。
「……お前は飯か」
私は頷く。
「うん」
「もっと美味しい」
商人は腕を組む。
「飯だけでそこまで変わるものか」
私は鍋を見る。
「変わる」
「多分」
商人は少し笑う。
「本気なんだな」
私は頷く。
「うん」
商人は値札を見る。
少し考える。
帳面を見る。
もう一度私を見る。
「……本当なら、もっと高い」
私は止まる。
商人は肩を竦めた。
「いつもの値段でいい」
私は少し笑う。
「ありがとう」
商人は鍋を布で包む。
「その代わり」
「また何か思い付いたら最初に俺の所へ来い」
私は頷く。
「うん」
商人は笑う。
「よし」
「ギルマスが待ってるぞ」
私は鍋を抱える。
重い。
これでご飯を炊こう。
楽しみだ。




