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第25章 ②
第25章② 鍋
商人は止まる。
私を見る。
もう一度見る。
「……挨拶は」
あっ。
気が急いた。
「おはよう」
商人は頷く。
「よし」
私はもう一度聞く。
「鍋ある?」
商人は笑った。
「昨日からそれしか言わんな」
私は頷く。
「ご飯」
「もっと美味しくなる」
商人は腕を組む。
「厚い鍋か?」
私は頷く。
「うん」
「土鍋みたいなの」
商人は少し考える。
「どなべ?よく分からん」
「でも厚手の鍋ならあるかもしれん」
私は頷く。
「見る」
商人が歩き出す。
私は付いて行く。
その時だった。
「おい」
聞き慣れた声だった。
振り向く。
ギルマスだった。
私は頷く。
「おはよう」
ギルマスも頷く。
「ああ」
商人が笑う。
「朝から鍋探しだ」
ギルマスは少し呆れた。
「鍋?」
私は頷く。
「ご飯」
「もっと美味しくなる」
ギルマスは少し黙る。
「……そうか」
商人が肩を竦める。
「頭の中、鳥の餌しかないぞ」
私は頷く。
「うん」
その通りだった。
ギルマスは少し笑った。
「鍋を見たら少し時間あるか?」
私は少し考える。
「鍋終わってから」
ギルマスは頷く。
「それでいい」
私は商人を見る。
「鍋」
商人は苦笑した。
「分かった分かった」
「まず鍋だ」
二人は歩き出す。
私は迷わず付いて行った。
頭の中は。
やっぱり。
鍋だった。




