第4章 勇者の初期装備④
第4章 勇者の初期装備④
洞窟へ戻る途中。
兄は受け取った荷物を持っていた。
パン。
コルン。
塩。
それを見る。
兄を見る。
そして言った。
「貸して」
兄は少し首を傾げた。
エコバッグを開く。
パンを入れる。
コルンを入れる。
塩を入れる。
そして満足した。
「よし」
兄は少し考えた。
こちらを見る。
荷物を見る。
もう一度こちらを見る。
やがて小さく頷いた。
持てるなら持つ。
それだけだった。
やがて洞窟が見えてきた。
その瞬間。
犬が飛び出してきた。
勢い良く駆け寄ってくる。
少し笑った。
「ただいま」
犬は尻尾を振る。
かなり振る。
懐いたらしい。
たぶん。
餌だった。
洞窟へ入る。
妹は入口近くで待っていた。
兄は少し安心したようだった。
荷物を置く。
そして今日の戦利品を並べた。
鍋。
フライパン。
かなり満足した。
「見て」
妹が首を傾げる。
兄も見る。
「鍋」
言った。
「鍋」
妹は鍋を見る。
兄も鍋を見る。
こちらも鍋を見る。
鍋だった。
異世界二日目。
鍋を手に入れた。
王様には会っていない。
チートも来ていない。
だが。
鍋はあった。
発泡スチロールを開ける。
鍋焼きうどん。
あった。
その隣。
コロッケ。
あった。
そして。
サラダ油もあった。
今日は勝った。
夜ご飯は決まった。
鍋焼きうどん。
焼きコロッケ。
兄が貰ったパン。
今日は少し豪華だった。
サラダ油を少しだけ垂らす。
本当に少しだけだった。
洞窟で揚げ物は怖い。
火事は嫌だった。
コロッケを並べる。
じゅうううう……
良い音がした。
良い匂いもした。
妹が見る。
犬も見る。
かなり見る。
なお。
犬は正直だった。
やがて夜ご飯になった。
鍋焼きうどん。
焼きコロッケ。
パン。
そして犬の分。
かなり満足した。
夜。
妹は眠った。
犬も丸くなった。
兄も横になった。
火だけが小さく揺れている。
発泡スチロールを覗く。
少し考える。
コロッケは減った。
鍋焼きうどんも減った。
良い事だった。
魚はまだある。
ハンバーグもある。
ベーコンもある。
少し安心した。
食料はまだ大丈夫そうだった。
それから少し考える。
包丁が欲しい。
かなり欲しい。
鍋の蓋も欲しい。
かなり欲しい。
異世界二日目だった。
そういえば。
スキルはまだ出ていない。
少し考える。
まあいいか。
包丁が先だった。
鍋の蓋も先だった。
主人公の優先順位はかなり現実的だった。
【次回予告】
異世界三日目。
主人公は気付いていなかった。
自分が順調に装備を揃えている事に。
【勇者装備完了】




