第22章 ➂
第22章③ 内職
私は商人ギルドへ向かった。
商人が私を見る。
「無事だったか」
私は頷く。
「熊」
商人も頷く。
「聞いた」
「生きてて何よりだ」
私は頷く。
「うん」
私は少し考える。
財布を見る。
軽い。
食料は増えた。
でも、お金は増えない。
私は商人を見る。
「仕事ある?」
商人が首を傾げる。
「薬草は雪で無理だぞ」
私は頷く。
「家の中で」
商人は少し考えた。
「内職か」
私は頷く。
「うん」
商人は奥へ入った。
しばらくして布を持って来る。
四角だった。
「袋を縫えるか?」
私は見る。
直線だった。
私は頷く。
「出来る」
商人は針と糸を置く。
「一枚縫ってみろ」
私は座る。
針へ糸を通す。
縫う。
真っ直ぐ。
ずっと真っ直ぐ。
縫い終わる。
商人へ渡した。
商人は表を見る。
裏も見る。
少し止まった。
「綺麗だな」
私は頷く。
「慣れてる」
商人は笑った。
「これなら頼める」
布を重ねる。
「出来高払いだ」
私は頷く。
「やる」
仕事がある。
少し安心した。
私は袋を見る。
それから商人を見る。
「小麦粉」
商人は頷く。
「買っていくか」
私は頷く。
「うん」
小麦粉。
塩。
少しだけ買う。
荷物はまた増えた。
重い。
でも安心だった。
私は家へ向かう。
雪道を歩く。
少しすると家が見えた。
人がいた。
鍛冶職人だった。
私は止まる。
「?」
職人は小さく笑う。
「約束だ」
何かを差し出した。
私は受け取る。
缶切りだった。
私は見る。
裏も見る。
もう一度見る。
「開けられる」
職人は笑った。
「ああ」
少し考える。
肩掛け鞄から取り出す。
ネズミの国の缶。
中を見る。
百円玉。
私は六枚取り出す。
職人へ渡した。
職人は見る。
表。
裏。
首を傾げた。
「金貨か?」
私は首を振る。
「違う」
「百円」
職人は分からない顔だった。
当然だった。
私は百円玉を指差す。
「傷」
首を振る。
「駄目」
今度は周りを指で囲む。
「ここを包む」
そして首を指差した。
「下げる」
職人は百円玉を見る。
私を見る。
もう一度百円玉を見る。
「……傷は付けたくないんだな」
私は頷く。
「大事」
それだけだった。
職人は少し笑う。
「変わった注文だ」
百円玉を返した。
「何個だ?」
私は少し考える。
ルーク。
サラ。
カイル。
ミラ。
ニコ。
そして。
イナ。
私は答える。
「六つ」
職人が止まる。
「犬もか?」
私は頷く。
「家族」
職人は少しだけ笑った。
「分かった」
「出来たら持って来る」
私は頭を下げた。
「お願い」
仕事。
増えた。
缶切りも出来た。
楽しみも増えた。
少しだけ。
冬が楽しみになった。




