第22章 ②
第22章② 町
ザク。
ザク。
雪を踏む音がした。
ギルマスが振り返る。
犬だ。
いや、イナだった。
尻尾を振っている。
私は止まる。
「イナ」
イナが尻尾を振る。
家の方向を指さす。
「留守番」
尻尾を振るだけ。
普通に来た。
信用できない。
ギルマスが犬を見る。
「こいつがイナか?」
私は頷く。
「イナ」
ギルマスが首を傾げる。
「昨日まで犬じゃなかったか?」
おばちゃんが笑った。
「昨日ねぇ、チビが『いぬ』って呼ぼうとして『いな』になっちまってね」
「そしたら、この子が振り向いたんだよ」
私は頷く。
「決まった」
おばちゃんも頷く。
「それから皆、イナだよ」
ギルマスはイナを見る。
イナは尻尾を振っていた。
「……なるほどな」
私は少し考える。
そして言う。
「お願い」
ギルマスが首を傾げる。
「何だ?」
私は家の方を指差す。
「家」
「子供だけ」
「お願い」
ギルマスは少し黙った。
昨日の熊。
子供達。
留守番。
全部分かったらしい。
「ああ」
「巡回のついでに見ておく」
私は頷く。
「お願い」
ギルマスはイナを見る。
「お前も家を頼むぞ」
イナが尻尾を振った。
分かったのだろうか。
多分。
分かっていない。
私は少し考える。
でもギルマスがいる。
多分、大丈夫だとおもう。
私とおばちゃんは町へ向かった。
後ろでは雪を掻く音が続いている。
ザッ。
ザッ。
少し歩くと町が見えた。
町の入口だった。
男が一人。
落ち着かなそうに外を見ている。
何度も。
何度も。
おばちゃんが言った。
「何してるんだい」
男が振り向く。
「母ちゃん!」
走って来た。
かなり慌てている。
「二日も帰って来ないから!」
「熊が出たって聞くし!」
「心配したんだぞ!」
おばちゃんは苦笑した。
「吹雪だったからねぇ」
「帰れなかったんだよ」
男は大きく息を吐いた。
それから私を見た。
「あなたが……」
おばちゃんが頷く。
「泊めてもらったんだよ」
「ご飯までご馳走になってねぇ」
男は深く頭を下げた。
「本当にありがとうございました」
私は頷く。
「うん」
男は後ろを振り返る。
「食料を持って来てくれ」
しばらくして袋が運ばれてきた。
パン。
干し肉。
保存食。
私は止まる。
多い。
男が言った。
「母がお世話になりました。受けとって下さい」
私は袋を見る。
おばちゃんを見る。
男を見る。
そして頷いた。
「ありがとう」
食料。
増えた。
少し安心した。




