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第21章 ⑥

第21章⑥ 押しくらまんじゅう


芋シチューを火にかけた。


布も詰めた。


薪も増えた。


器も並んだ。


泊まる準備は、だいたい出来た。


私は家の中を見る。


いつもより人が多い。


私達三人と犬。


そこに、お姉ちゃん。


男の子。


小さい子。


おばちゃん。


多い。


ここに来てから、一番多いかもしれない。


洞窟の方が広かったかもしれない。


私は少し考える。


引っ越した。


家に来た。


でも人数が増えた。


結果。


狭い。


何故だろう。


でも。


寒くはない。


妹がいる。


小さい子もいる。


犬もいる。


近い。


かなり近い。


私は少し動く。


妹が笑う。


小さい子も笑う。


犬が尻尾を振る。


犬は近い。


近すぎる。


私は犬を見る。


犬は嬉しそうだった。


何故だろう。


おばちゃんが言った。


「ほら、もっと寄んな。寒いだろう」


私は寄る。


妹が寄る。


小さい子も寄る。


犬も寄る。


犬は違う。


でも寄る。


ぎゅうぎゅうだった。


おばちゃんが笑う。


「押しくらまんじゅうみたいだねえ」


私は止まる。


押しくらまんじゅう。


久しぶりに聞いた。


ここにもあるんだ。


妹が首を傾げる。


「おしくら?」


私は少し考える。


「寒い時にする」


妹の目が光った。


小さい子の目も光った。


犬も立った。


犬は違う。


多分。


でも遅かった。


私は言う。


「押しくらまんじゅう」


妹が真似をする。


「おしくら、まんじゅう」


小さい子も真似をする。


「まんじゅ」


犬も混ざる。


混ざらなくていい。


私は続ける。


「押されて泣くな」


妹が止まる。


小さい子も止まる。


お姉ちゃんも止まる。


兄も見る。


男の子も見る。


おばちゃんも見る。


「なくの?」


妹が聞いた。


私は少し考える。


確かに。


押される。


泣くな。


何故だろう。


かなり乱暴だ。


私は首を傾げる。


「遊び」


妹は疑っていた。


小さい子は犬を見る。


犬は尻尾を振っている。


泣かなそうだな。


妹が言った。


「いぬ、やる」


犬が立った。


やる気だった。


違う。


そうじゃない。


犬は真ん中にいた。


何故だろう。


押しくらまんじゅうの中心だった。


妹が笑う。


小さい子も笑う。


犬も尻尾を振る。


皆、笑う。


私は犬を見る。


犬は得意そうだった。


何もしていない。


でも。


全部やった顔だった。


少しして、鍋が鳴った。


くつくつ。


白い湯気が上がる。


芋シチューだった。


妹が鍋を見る。


小さい子も見る。


犬も見る。


犬は見るな。


私は器へよそう。


まず子供。


妹。


小さい子。


兄。


男の子。


お姉ちゃん。


おばちゃん。


最後に私。


犬はすこし。


犬は私を見る。


とても良い子の顔だった。


……。


犬は尻尾を振る。


私は首を振る。


犬は座った。


諦めていない顔だった。


信用できない。


妹が白いシチューを覗き込む。


「しちゅー」


小さい子も言う。


「しちゅ」


お姉ちゃんは器を両手で持っている。


湯気で顔が隠れていた。


少しだけ目が丸い。


「白い……」


おばちゃんが笑う。


「本当に変な食べ物だねえ」


私は少しむっとする。


変ではない。


私は言う。


「温かい」


おばちゃんは頷く。


「それは分かる」


みんなで食べる。


熱い。


芋はほくほくしている。


シチューは薄い。


人数が多いから仕方ない。


でも温かい。


それで十分だった。


小さい子が一口食べる。


止まる。


そして、もう一口食べる。


妹が笑う。


「おいしい?」


小さい子は頷く。


かなり真剣だった。


お姉ちゃんがそれを見て、少しだけ息を吐いた。


安心した顔だった。


男の子は黙って食べている。


兄も黙って食べている。


二人とも熱そうだった。


でも食べるのは早い。


似ている。


多分。


犬が少し近付いた。


私は犬を見る。


犬は止まる。


小さい子の器を見る。


私はさらに見る。


犬は目を逸らす。


またか。


小さい子は器を抱えた。


守っている。


偉い。


芋を守っている。


成長だった。


犬は少し残念そうだった。


よし。


守り切った。


芋も。


シチューも。


今日は守り切った。

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