第21章 ⑤
第21章⑤ 吹雪
食べ終わる頃には弱まる。
おばちゃんはそう言った。
でも、弱まらなかった。
むしろ強くなった。
入口の向こうは白い。
雪が横に飛んでいる。
風の音が洞窟の中まで入ってくる。
ごう。
そんな音だった。
妹が私の服を掴む。
小さい子もお姉ちゃんの服を掴む。
兄は入口を見ている。
男の子も見ている。
二人とも無言だった。
犬だけが入口へ行こうとする。
私は首を掴んだ。
「駄目」
犬が振り返る。
行ける。
そんな顔だった。
駄目。
絶対に駄目。
私は犬を引き戻す。
犬は少し不満そうだった。
おばちゃんが外を見る。
そして、すぐに引っ込んだ。
顔に雪が付いている。
「駄目だね」
おばちゃんは笑った。
「こりゃ帰れない」
お姉ちゃんの顔が強張る。
男の子もこちらを見る。
小さい子は芋を握っている。
まだ食べていた。
私は外を見る。
確かに。
白い。
何も見えない。
町へ行く道も。
洗濯場も。
少し先も。
全部白い。
私はおばちゃんを見る。
「無理?」
おばちゃんは頷く。
「大人だけならね、何とか行けるかもしれないけど」
そこで子供達を見る。
「この子達は無理だ」
お姉ちゃんが俯く。
「でも、家が」
おばちゃんが手を振る。
「今日は諦めな。あんた達が雪に埋まる方が困るよ」
確かに。
私は頷く。
「泊まる?」
お姉ちゃんが顔を上げる。
「え」
私はもう一度言う。
「泊まる?」
お姉ちゃんは固まった。
男の子も固まった。
小さい子は芋を見る。
妹が笑う。
「いっしょ」
それで決まった。
おばちゃんが笑った。
「じゃあ、私も泊まるかねえ」
私はおばちゃんを見る。
おばちゃんも?
おばちゃんは肩をすくめる。
「この雪で帰ったら、うちの爺さんに怒られる」
そうなのか。
私は頷く。
それは仕方ない。
おばちゃんも泊まる。
家の中を見る。
人数が増えた。
私は考える。
寝る場所。
毛布。
ご飯。
足りるだろうか。
足りる。
多分。
私は立ち上がる。
「兄」
兄がこちらを見る。
「薪、増やす」
兄は頷く。
男の子も立つ。
「俺も」
兄は男の子を見る。
少しだけ頷いた。
二人は奥へ行った。
お姉ちゃんが慌てて立つ。
「私も手伝います」
私は頷く。
「器、洗う」
お姉ちゃんはすぐに動いた。
手早い。
本当に手早い。
おばちゃんは入口の近くに布を掛け始めた。
「風が入るからね」
そう言って、持っていた厚手の布を広げる。
私は手伝う。
入口全部は無理だった。
でも少しは違う。
風が直接入らないだけで、だいぶ違った。
妹と小さい子は火の近くにいる。
犬もいる。
犬は小さい子の手元を見ている。
私は犬を見る。
犬は目を逸らす。
またか。
小さい子は芋の最後を口に入れた。
犬は少しだけ残念そうだった。
よし。
守り切った。
私は鍋を見る。
夜もいる。
人が多い。
何を作るか。
パンはある。
芋もある。
肉は少ない。
私は止まる。
シチュー。
ある。
芋ある。
よし。
芋シチュー。
おばちゃんがそれを見る。
「何だい、それ」
私は答える。
「夜ご飯」
おばちゃんは目を細める。
「また変なものかい」
失礼な。
でも多分そう。
私は頷いた。
「温かい」
それで十分だった。
外では吹雪が続いている。
白い音がする。
洞窟の中は少し狭い。
でも火はある。
子供の声もある。
犬もいる。
犬はまた良い子の顔をしている。
怪しい。
私は犬を見る。
犬は尻尾を振る。
信用できない。
でも。
少しだけ楽しかった。
吹雪だった。
帰れない。
今日はみんなで泊まる。
犬は火の近くに座っていた。
とても良い子の顔だった。
多分、夜の芋シチューを見ている。
名前は犬。
職業は芋の監視員。
実態は泥棒。
私は犬を見る。
犬は尻尾を振った。
信用できない。




