第4章 勇者の初期装備②
第4章 勇者の初期装備②
兄は迷いなく歩いていた。
その後を追う。
鍋を抱えて。
フライパンも抱えて。
かなり邪魔だった。
だが置いていく気は無かった。
警戒心が強かった。
主に生活用品に対して。
市場を抜ける。
露店を抜ける。
人通りが少し減る。
辺りを見回した。
「どんな仕事?」
兄は少し考える。
そして言った。
「集める」
「何を?」
兄は答えなかった。
代わりに町の外れを指差した。
森が見えた。
昨日通った方角だった。
しばらく歩く。
やがて石畳が途切れた。
土の道になる。
兄は慣れた様子だった。
少しだけ周囲を見回す。
森。
草原。
岩場。
そして。
何も無かった。
首を傾げる。
「ここ?」
兄は頷いた。
そして地面へしゃがみ込む。
覗き込む。
草だった。
普通の草だった。
兄は慣れた手つきで引き抜く。
一本。
二本。
三本。
しばらく見ていた。
そして言った。
「雑草?」
兄がこちらを見る。
少しだけ嫌そうだった。
「違う」
兄は集め始める。
草。
木の実。
枯れ枝。
時々小さなキノコ。
しばらく見ていた。
かなり真面目だった。
兄は黙々と拾う。
慣れていた。
少し首を傾げる。
「それ売るの?」
兄は頷く。
「交換」
なるほど。
少し納得した。
兄はまた草を摘む。
木の実を拾う。
枯れ枝を束ねる。
兄を見る。
集めた物を見る。
兄を見る。
集めた物を見る。
少し考える。
そして言った。
「少なくない?」
兄が固まった。
「それ一日分?」
兄は頷く。
周囲を見る。
草原を見る。
森を見る。
兄を見る。
もう一度草原を見る。
主人公の中で何かが動いた。
主に運搬効率だった。
兄へ手を出した。
「貸して」
兄は首を傾げた。
エコバッグを取り出す。
一つ。
二つ。
三つ。
兄がまた固まった。
「これ薬草用」
一つ目。
「木の実用」
二つ目。
「キノコ用」
三つ目。
兄はまだ固まっていた。
周囲を見回す。
薬草。
ある。
木の実。
ある。
キノコ。
ある。
かなり真面目に考えた。
「まだ入るな」
薬草へ近付く。
手を伸ばす。
その瞬間だった。
兄が慌てて止めた。
「残す」
固まる。
「え?」
兄は薬草を指差した。
「残す」
少し考えた。
薬草を見る。
兄を見る。
薬草を見る。
そして思い出した。
採取クエストでは取り尽くしてはいけない。
ラノベで読んだ。
若芽は残せ。
根は傷付けるな。
採取ポイントは守れ。
そんな感じだった気がする。
少し反省した。
「危なかった」
兄は頷いた。
「危ない」
薬草を見る。
まだ沢山ある。
木の実もある。
キノコもある。
少し考える。
そして言った。
「じゃあ半分」
兄は少し考えた。
そして言った。
「多い」
周囲を見る。
森を見る。
草原を見る。
もう一度兄を見る。
「残るよ?」
兄は小さくため息をついた。
主人公はまだ分かっていなかった。
スローライフとは。
急いで一週間分集める事ではない。




