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閑話 初めての温泉

閑話 初めての温泉


朝。


温泉には人が集まっていた。


商人もいる。


職人もいる。


木こりもいる。


冒険者もいた。


おばちゃん達も来る。


商人が言う。


「今日から使うぞ」


みんな温泉を見る。


湯気だった。


少し緊張する。


やがて一人が言った。


「本当に入っていいのか?」


職人が笑う。


「そのために作った」


みんな笑う。


おばちゃんが言う。


「じゃあ一番は私だね」


「早い者勝ちだ」


冒険者も笑う。


男達も笑う。


しばらくして。


温泉から声が聞こえた。


「あったかい!」


「気持ちいい!」


「生き返るねぇ」


男湯からも聞こえる。


「最高だ!」


「肩まで浸かれるぞ!」


木こりも笑う。


「仕事の後は毎日だな」


職人も頷いた。


その頃。


おばちゃんが桶を持つ。


湯を汲む。


商人が止めた。


「待て」


「洗濯は向こうだ」


おばちゃんが止まる。


「向こう?」


職人が手を差す。


外だ。


温泉の湯が流れている。


少し掘られていた。


板が並ぶ。


桶も置いてある。


おばちゃんが見る。


「いつ作ったんだい?」


職人が答える。


「昨日だ」


「湯は流れてる」


「使わないと勿体ない」


おばちゃんが笑う。


「助かるねぇ」


木こりも頷く。


「冬は水が冷たい」


「これなら楽だ」


洗濯物を浸ける。


湯気が立つ。


手も暖かい。


「これは良い!」


「あんた達偉いよ!」


冒険者が笑う。


「考えたのは職人だ」


職人は首を振る。


「言い出したのは商人だ」


商人も笑う。


「いや」


「あいつだ」


みんな止まる。


「あいつ?」


商人が頷く。


「樽風呂作った奴」


おばちゃんも笑う。


「ああ」


「みーか」


木こりが笑う。


「本人は知らんだろ」


「知らんな」


職人も笑う。


「洗濯場まで出来たって聞いたら驚くだろ」


商人も頷く。


「『便利だ』で終わる」


みんな笑った。


湯気は静かに立ち上っていた。


町にも。


少しずつ。


冬の日常が増えていた。

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