閑話 作戦会議
閑話 作戦会議
その日の夕方の冒険者ギルド。
いつもより人が多かった。
冒険者、商人、職人、何故か町の人達。
受付嬢が周りを見る。
「それで?」
一人の冒険者が言う。
「風呂だ」
商人も頷く。
「風呂だ」
職人も頷いた。
「風呂だな」
受付嬢は少し考える。
「……何の話ですか?」
全員止まる。
一人の冒険者が言う。
「湯が湧き出た」
受付嬢が止まる。
「本当に?」
「本当だ」
商人が笑う。
「熱かったぞ」
職人も頷く。
「良い湯だった」
まだ誰も入っていない。
話は続く。
「囲いが要る」
「脱衣場もだ」
「屋根も欲しい」
「道も整備しろ」
「石段も作るか」
「ベンチも欲しいな」
「おお!」
受付嬢は思う。
話が大きくなっていた。
その時だった。
職人が一言だけ言う。
「予算」
全員止まる。
冒険者が口を開く。
「町へ報告するか?」
部屋が静かになる。
やがて。
一人が言う。
「やめとけ」
「何でだ?」
「役人が来る」
商人も頷く。
「税も増える」
「立ち入り禁止かもしれん」
職人が腕を組む。
「面倒だな」
おばちゃんは小さく笑った。
「じゃあ黙っとくかい」
「おお」
話は終わりそうだった。
その時。
商人が止まる。
「待て」
みんなを見る。
そして言った。
「洞窟の前に家を建てればどうだ?」
冒険者が首を傾げる。
「家?」
商人は頷く。
「あいつらの家だ」
「敷地の中に風呂がある」
「そういう事にしちまえばいい」
部屋が静かになる。
職人が呟く。
「……なるほど」
おばちゃんも笑った。
「それなら誰も文句は言わないね」
冒険者達も笑う。
「決まりだ」
「家を建てるぞ」
誰も反対しなかった。
本人だけが。
まだ何も知らなかった。




