第19章 ⑤
第19章 ⑤ 広がる
「熱い!」
男が笑う。
周りも穴を見る。
一人が手を入れる。
「本当だ!」
もう一人も笑う。
「お湯じゃねえか!」
その瞬間だった。
一人の冒険者が言う。
「おい!」
「スコップ持って来い!」
町へ走る。
商人も走る。
何故走る?
しばらくして、戻って来た。
スコップだ。
一つではない。
二つ。
三つ。
もっとだった。
冒険者も増えていた。
何故?
男が笑う。
「風呂になるぞ!!」
「広げるぞ!!」
「おお!」
話は終わった。
みんな掘り始める。
速かった。
泥が飛ぶ。
土が飛ぶ。
石もどける。
穴が少しずつ広がる。
私は思う。
早い。
職人は石を拾う。
穴の縁へ置く。
一つ。
また一つ。
冒険者達も真似をする。
石を運ぶ。
並べる。
積む。
職人が言う。
「違う」
積み直す。
また並べる。
今度は頷いた。
「底にも石を敷け。」
「運ぶぞ!」
「そこ触るな! 湯が止まる!」
「それでいい」
少しずつ。
形になっていく。
私は見る。
風呂だ。
やがて。
職人が立ち上がる。
穴を見る。
周りを見る。
そして頷いた。
「よし」
冒険者達も笑う。
商人も笑う。
おばちゃんも笑った。
私はしゃがむ。
お湯へ手を入れる。
熱かった。
男が笑う。
「囲いが要る!」
「脱衣場もだ!」
「屋根も付けろ!」
「道も広げろ!」
「おお!」
私は思う。
確かに。
職人が頭を掻く。
「今日は終わりだ」
みんな止まる。
「続きは明日だ」
「おお!」
終わったらしい。
多分。




