第18章 ①
第18章① 挨拶
朝起きるのが辛い。
私は毛布から出る。
後悔した。
戻りたかった。
本気で。
しかし。
今日は町に行く予定だ
私は起き上がる。
兄も起きる。
妹は毛布だった。
犬も毛布だった。
出てこない。
出てきなさい……。
私はカートを見る。
毛布を敷く。
さらに敷く。
妹を入れる。
犬も入れる。
兄も入れる。
その上から更に毛布。
三人とも毛布へ埋まった。
暖かそうだった。
私は少し羨ましかった。
しかし押すのは私だった。
世の中そんなものだ。
私はカートを押す。
兄妹は乗っている。
犬も乗っている。
楽そうだった。
途中。
妹が聞く。
「どこ?」
「町」
妹は頷く。
分かったらしい。
多分。
やがて市場へ着く。
相変わらず人が多かった。
寒いのに。
私は歩く。
しばらくして。
見慣れた屋台が見えた。
おばちゃんだった。
私は近付く。
おばちゃんが顔を上げる。
そして止まる。
私を見る。
カートを見る。
妹を見る。
犬を見る。
兄を見る。
もう一度私を見る。
そして言った。
「増えてないね?」
私は頷く。
「増えてない」
大事な事だった。
おばちゃんも頷く。
安心したらしい。
妹がおばちゃんを見る。
少しだけ迷う。
そして言った。
「こんにちは」
おばちゃんが目を丸くする。
妹は少し前まで隠れていた。
今は違う。
おばちゃんは笑った。
「こんにちは」
妹も笑った。
良かった。
私は袋を置く。
おばちゃんが見る。
中には68円コルンポップ。
「土産」
おばちゃんは袋を見る。
私を見る。
もう一度袋を見る。
そして言った。
「売り物じゃないのかい」
「違う」
「そうかい」
おばちゃんは少し笑った。
それだけだった。
でも。
少し嬉しそうだった。
来て良かった。
遠くから声がする。
「みー!」
私は止まる。
聞き覚えがあった。
嫌な予感はしなかった。
振り返る。
商人だった。
走って来る。
元気だった。
無駄に。
私は思う。
今日は特売だな。




