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第17章 ⑤

第17章⑤ 湯船


数日後


私は洞窟にいた。


目の前には樽。


大樽だった。


上は切られている。


中には踏み台。


下には栓。


完璧だった。


私はしばらく見つめる。


良い樽だった。


兄も見ている。


妹も見ている。


犬も見ている。


みんな見ていた。


私は言う。


「やる」


兄が頷く。


「うん」


早速準備だった。


水を運ぶ。


鍋で沸かす。


また運ぶ。


また沸かす。


結構大変だった。


でも頑張った。


湯船の為だ。


しばらくして。


樽から湯気が立ち始める。


私は確認する。


良い温度だった。


多分。


私は兄を見る。


「先」


兄が首を振る。


「みー」


私は少し驚く。


兄は続ける。


「みーが作った」


私は少し考える。


確かに。


作った。


私は頷く。


「入る」


妹も頷いた。


「入る!」


違った。


妹は後だった。


私は樽へ近付く。


靴を脱ぐ。


そっと足を入れる。


温かかった。


私はゆっくり腰を下ろす。


沈む。


沈む。


そして。


肩まで浸かる。


思わず声がでた。


おっさんの様な。


勝った。


冬に勝った。


多分。


しばらく動けなかった。


温かかった。


本当に温かかった。


私は空を見る。


洞窟だった。


天井だった。


でも良かった。


兄が聞く。


「どう?」


私は答える。


「最高」


兄は少し笑った。


妹も笑った。


犬だけはよく分かっていなかった。


私は湯へ沈む。


やはり。


湯船は最高だ。


日本人だ。

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