第17章 ②
第17章② 樽
翌日。
私は町へ来ていた。
いつもの二人と1匹。
道が出来てからは大体一緒だ。
違う事が一つだけある。
私は風呂の事を考えていた。
兄が聞く。
「まだ考えてるの?」
「考えてる」
兄は頷いた。
「好きだね」
「好き」
湯船。
肩まで浸かりたい。
私は聞く。
「町に風呂ある?」
兄は頷く。
「あるよ」
私は少し驚く。
「あるんだ」
「ある」
私は少し期待する。
「毎日入れる?」
兄は首を振った。
「無理」
駄目だった。
「遠い?」
「遠い」
「高い?」
「高い」
私は頷く。
終了。
兄も頷く。
終了らしかった。
私は空を見る。
冬。
寒い。
風呂が欲しい。
誰かが言ってた。
諦めたらそこで風呂終了だ。
ん?違うな。
試合終了だ。
その時だった。
見覚えのある声が聞こえた。
「おう」
商人だ。
私は頷く。
「こんにちは」
商人も頷く。
「今日は何だ」
良いところに...。
そして聞いた。
「樽ある?」
商人が止まる。
「樽?」
「樽」
商人は少し考える。
「あるぞ」
良かった。
商人は続ける。
「酒樽か?」
「大きい?」
「大きいぞ」
「どれくらい大きい?人入る?」
商人が止まる。
兄も止まる。
妹だけは犬を撫でていた。
私は妹の頭を撫でる。
商人が聞く。
「何に使うんだ?」
私は答えた。
「風呂」
商人は黙った。
兄も黙った。
しばらく誰も喋らなかった。
やがて商人が言う。
「……風呂?」
「うん。風呂」
商人は天井を見た。
そして深く溜息を吐いた。
「見に来るか」
「うん」
風呂へ一歩近付いた気がした。




