第3章 コルンポップと屋台のおばちゃん①
第3章 コルンポップと屋台のおばちゃん①
香ばしい匂いがした。
ぴたりと足が止まる。
匂いの方向を見る。
露店だった。
異世界二日目。主人公が最初に興味を持ったのは。
魔法でも。
冒険者でもなく。
屋台だった。
鉄板の上で何かが焼かれている。
じゅううう……
香ばしい。
平たい丸い生地。
少し焼き色が付いている。
パンに見える。
でも少し違う。
「あれ何?」
兄は一瞥する。
「コルン焼き」
「コルン?」
兄は頷く。
「コルン」
鉄板を見る。
生地を見る。
もう一度見る。
「とうもろこし?」
兄は首を傾げた。
「?」
通じなかった。
どうやら異世界ではコルンらしい。
異世界にもとうもろこしがあったんだ。
名前は違うけど。
たぶん。
鉄板を見る。
じゅううう……
美味しそうだった。
非常に。
お腹は減っていない。
でも食べたい。
それは別腹。
その時。
屋台のおばちゃんが笑った。
「珍しいかい?」
素直に頷く。
「うん」
「旅の人かい?」
少し考える。
「遠い所から」
嘘ではなかった。
たぶん。
かなり遠い。世界単位で。
もちろん。
そんな事は説明出来ない。
おばちゃんは気にした様子も無かった。
「食べるかい?」
財布を思い出す。
現金を思い出す。
異世界を思い出す。
静かに首を振った。
「お金使えるか分からない」
おばちゃんは笑った。
兄は少し離れた所で待っている。
完全に他人のふりだった。
主人公はまだ気付いていない。
エコバッグの中には。
ポップコーンが二つ入っていた。
一つは試食用。
一つは交換用。
完璧な計画だった。
たぶん。
屋台を見る。
コルン焼きを見る。
エコバッグを見る。
そして少し考えた。
もしかして。
ワンチャンあるのでは。




