第2章 異世界の朝と食中毒会議②
第2章 異世界の朝と食中毒会議②
洞窟を出る前に。
私はふと立ち止まった。
「あ」
兄が振り返る。
「?」
私は買い物カゴを見る。
発泡スチロールを見る。
そして真顔になった。
「これ置いてって大丈夫?」
兄は荷物を見る。
そして普通に言った。
「……たぶん」
たぶんだった。
私は不安になった。
「ネズミとか来ない?」
兄は少し考えた。
「来る」
即答だった。
私は固まる。
「来るの!?」
来るらしい。
異世界二日目だった。
だが。
問題は魔物ではない。
ネズミだった。
私は荷物を見る。
発泡スチロール。
買い物カゴ。
食料。
大量。
かなり大量。
私は静かに顔を覆った。
「どうしよう……」
兄は少し考える。
そして洞窟奥を指差した。
「置く」
なるほど。
私は頷く。
確かに入口よりは安全そうだった。
私は早速動き始める。
買い物カゴを持つ。
重い。
発泡スチロールを持つ。
重い。
だが運ぶ。
私は何度か往復した。
兄も少し手伝った。
犬は見ていた。
妹は犬を撫でていた。
平和だった。
やがて。
荷物は洞窟奥へ積み上がった。
私は満足そうに頷く。
「よし」
その時。
犬と目が合った。
私は少し考える。
犬を見る。
荷物を見る。
再び犬を見る。
「お留守番お願いね」
犬は欠伸をした。
了承したのか。
していないのか。
よく分からなかった。
私は勝手に納得する。
「頼んだ」
犬は寝転がった。
私は満足した。
これで大丈夫である。
たぶん。
なお。
根拠は特に無い。
*
準備を終えた私は持ち物を確認する。
肩掛け鞄。
財布。
レシート大量。
スマホ。
圏外。
私はしばらく財布を見つめる。
現金は入っている。
だが。
使える気はしなかった。
私は静かに財布を鞄へ戻した。
私は買い物カゴを漁る。
ごそごそ。
「あった」
ポップコーンだった。
昨日買ったやつである。
塩バター味。
私は二つ取り出す。
兄が不思議そうに見ていた。
「それ」
「お菓子」
兄はよく分からない顔をした。
私はさらに考える。
塩。
持っていくか。
重い。
味噌。
持っていくか。
重い。
私は真顔になる。
「却下」
重かった。
私はポップコーン二つをエコバッグへ入れる。
一つは試食用。
もう一つは交換用。
完璧だった。
「行こう」
兄は頷いた。
妹は犬の隣へ座る。
犬は動かない。
妹も動かない。
何だか大丈夫そうだった。
私は手を振る。
「行ってくるね」
妹も小さく手を振った。
犬は欠伸をした。
こうして。
主人公は初めて異世界の町へ向かった。
なお。
所持金は相変わらず無かった。
そして。
十分後。
私は完全に挙動不審になっていた。
「あれ何?」
「何だろうあれ」
「おお」
「屋根ある」
兄は黙って歩いている。
私は忙しかった。
見る物全てが異世界だったのである。
町は思ったより大きかった。
人も居る。
店もある。
荷車もある。
私はきょろきょろする。
完全にお上りさんだった。
兄は少し離れて歩き始めた。
知らないふりをしたかったらしい。
なお。
主人公は気付いていない。
その時だった。
香ばしい匂いがした。
私はぴたりと止まる。
匂いの方向を見る。
露店だった。
私は吸い寄せられる。
異世界二日目。
主人公が最初に興味を持ったのは。
魔法でも。
冒険者でもなく。
屋台だった。




