第16章 ➅
第16章⑥ 取引
「カレーだ」
やはり嫌な予感だった。
商人は続ける。
「売れる」
私は頷く。
「美味しい」
「そうだ」
商人も頷いた。
「だから売れる」
なるほど。
商人らしかった。
私は少し考える。
そして答える。
「頑張って」
商人が止まった。
「頑張る?」
私は頷く。
「うん」
商人は首を傾げた。
何故だろう。
私は正しい事を言った。
商人は聞く。
「材料を教えてくれ」
丸ネギ。
人参。
カルト芋。
肉。
後は。
私は答えた。
「カレー」
商人が机へ突っ伏した。
「そこだ!」
何故だろう。
私は答えた。
「茶色い」
「見れば分かる!」
商人は叫んだ。
かなり大きな声だった。
受付嬢が笑っていた。
商人は頭を抱える。
「何が入っているんだ」
私は少し考える。
そして答えた。
「薬草」
商人が止まった。
ギルマスも止まった。
受付嬢も止まった。
私は続ける。
「多分」
商人が天井を見た。
「多分……」
私は頷く。
「胃薬みたいな匂いの薬草」
商人は固まった。
ギルマスも固まった。
受付嬢だけ笑っていた。
私おかしな事言った?
急に商人が立ち上がる。
「薬師だ」
私は首を傾げる。
「薬師?」
商人は頷いた。
「薬師なら分かるかもしれん」
なるほど。
良い考えだ。
商人は続ける。
「現物をくれ」
は?
私は答える。
「嫌」
商人も止まった。
「何故だ」
くれってなんだよ…。
「高級品」
商人が黙った。
正論だった。
「もう、手に入らない」
商人はしばらく考える。
そして聞いた。
「売ってくれ」
私は少し考える。
残りは四キロくらいだった。
冬越し用だった。
大事だった。
私は答えた。
「高いよ?」
商人は頷く。
「構わん」
私は少し考える。
そして言った。
「じゃあ一欠片」
商人が身を乗り出した。
「本当か!」
私は頷く。
「うん」
商人は少し安心した顔になった。
良かった。
私は続ける。
「その代わり」
商人が止まる。
私は言った。
「完成したら頂戴」
商人も止まった。
ギルマスも止まった。
受付嬢も止まった。
「作るの面倒」
商人はしばらく黙った。
やがて。
深く。
本当に深く溜息を吐いた。
「お前は商売人じゃないな」
私は頷く。
当然だった。
「主婦だから」
ギルマスが遠い目をした。
何故だろう。




