第16章 ⑤
第16章⑤ 商人
「今日も厄日か……」
ギルマスが頭を押さえた。
商人は脇目もふらず真っ直ぐこちらへ来る。
私は少し驚く。
商人は私を見る。
次にカートを見る。
また私を見る。
そして聞いた。
「それは何だ!」
私は答える。
「カート」
商人が止まった。
「そうじゃない!」
?
私は正しく答えた。
商人はカートを指差す。
「それだ!」
私は頷く。
「カート」
商人は天井を見た。
ギルマスも天井を見た。
商人は深呼吸した。
そして聞く。
「何処で手に入れた!」
「何か関係ある?」
商人が止まった。
その時だった。
兄が助けてくれた。
「拾った物です」
商人が兄を見る。
「本当か?」
兄は頷く。
「多分」
私は頷く。
「多分」
商人は頭を抱えた。
その後。
商人はカートを調べ始めた。
車輪を見る。
持ち手を見る。
底を見る。
横も見る。
目が怖い…。
やがて商人が言った。
「面白いな」
私は頷く。
「便利」
商人も頷く。
「便利だな」
その時だった。
妹が胸を張る。
「はやい!」
商人は少し笑った。
「そうか」
妹も満足そうだった。
商人は私を見る。
「カレーもそうだ」
私は首を傾げる。
「カレー?」
商人は頷く。
「カレーだ」
私は頷く。
カレー。
商人は続ける。
「味噌もだ」
私は頷く。
味噌。
商人は頭を抱える。
「何なんだお前は」
何って……
「主婦」
商人が止まった。
ギルマスも止まった。
受付嬢も止まった。
私は正直に答えた。
その時だった。
ギルマスが呟く。
「主婦か……」
何故か遠い目だった。
その後。
商人は椅子へ座る。
そして真面目な顔になった。
「取引をしたい」
私は止まる。
嫌な予感がした。
商人は言った。
「カレーだ」
やはり嫌な予感が当たった。




