プチラモラは迫ってきた
「琉田!生きてたんだ!」
「そう。私たち無事だわ。あれ?他は?」
「…様田は分からないけど、藤上と牧中はやられた。」
「………。」
「どうした?」
「様田の踊る姿を見つけたの。」
「え?」
「だから生き残ってるのは私たちだけね。」
「そんな…」
その時門番をしていた中年の男性が「俺もおるぞ」と言った。
「そうね…伊綱さんもいたわ。」
「だれ?伊綱さんて。」
「彼は命の恩人。たくさんあいつらに取り囲まれた時勇敢にも彼はあいつらを素手で倒したの。それで助かったわけ。あ、伊綱さんの意見も聞いてみる?」
「え?どんな?」
「では言おう。」
と、伊綱が喋り始めた。
「考えてみれば、どうしてあの歌にあれだけの力があるか、そして、どうやってあいつらがあんなまとまった行動ができるか。結論は一つだ。」
「え?なんですか?」
「聞けば分かる。」
そこで相田は耳を澄ましてみた。「あなたも一緒に!」と誰かが叫びそれに皆が「プチラモラー!」と応える。その声に聞き覚えがあったので、相田ははっとした。事の発端、それは…
「赤ヘル!」
「そうだ。やつらの教祖でゲモゲモ・プチラモラの歌手、赤ヘルだ。相田くんは最初あれが発生する現場を見たんだな。」
「はい。」
「おそらく赤ヘルは遠隔からテレパシーか何かで洗脳する技をもっている。やつらの中では最強だ。だから奴を倒すしかない。これが俺の意見だ。おそらく間違いではないだろうが。」
「ですね。」
しばらくして音楽が止んでいる事に三人は気付いた。勿論終わったわけでなく、赤ヘルと思しき男が何やら演説をして皆がそれに大声の相づちを打っていた。
「我々のゲモゲモ・プチラモラに幸あれ!」
「幸あれ幸あれ!」
「しかしながら我々に反抗する愚か者がいる!」
「誰だ誰だ!?」
「それはこの私が立ってている塔のなかにいる!」
「何何!!」
「よい子のみんなぁぁぁぁ!塔のなかに、進攻だ!」
そして音楽再開、「プチラモラー、プチラモラー、」と言いながら人々は塔の扉に行進した。
三人は顔を見合わせた。そして同時に言った。
「やばい!」
「塔の頂上にいる!」
「あいつらがくる!」
そしてどうしようかあたふたした。そのうち、突然伊綱が部屋の、階下に繋がる扉に向かった。
「伊綱さんなにを!」
「決まっとるだろ、やつらを食い止める。」
「でも、それでは…」
「早くせい!お前等は赤ヘルを食い止めろ!」
そう言って伊綱は扉を閉めて階段の下へと向かった。すでに大勢の人々が「プチラモラー、プチラモラー、」と連呼しながら、暗い階段を規則正しく上っていた。バットを構えた伊綱は、暗がりから聞こえるうめきのような声と足音に対して叫んだ。
「さあ、きやがれ、操り人形めが、この先は貴様等には絶対邪魔をさせない!絶対にな!」
そう言って伊綱は「ぬぁああああ!!」と叫びながら彼らの方に突進していった。勝ち目は無い事は彼は悟っていた。
一方相田と琉田は部屋のもう一つの階段を上った。まだあの部屋は頂上ではなかったからである。「プチラモラー!」がかすかに周りから響く中、彼らは意識をそちらに向けないよう注意しながら先へ走った。
そしてとうとう梯子に辿り着いた。梯子の上は蓋になっている。この頂上に赤ヘルがいる。二人は顔を見合わせて決心したように梯子に登り蓋を開けた。




