プチラモラの運命は
蓋を開け、二人はそこをよじ登った。そこは塔の頂上であった。周囲から「イル・ナンケストラ・ウラ・ウー」の掛け声が聞こえた。端に何者かが立っていた。赤いヘルメットに赤いマント、白いタイツに黄色い長靴。まごうことなき赤ヘルだ。
「そこまでだ!」と相田は叫んだが、赤ヘルはにやりと笑って言った。
「まあまあまあ、相田小見郎くん。落ち着きたまえ。」
「なぜ名前を知っている!」
「なぜ名前を知っているかって?きみはゲモゲモ・プチラモラの歌詞の意味がわかってないようだな。」
「そんなの聞きたくもない!」
「まあそう言わずに。『ゲモゲモ・プチラモラ私も皆も繋がる』つまり、今踊っている君のお仲間さんからテレパシーで情報をいただいたのさ。」
「このやろう!」
「まあまあまあまあ、まずここから街を見渡してくれたまえ。」
相田は見回した。観戦場みたいに人々がこの塔の周りにびっしり集まっていた。皆「イル・ナンケストラ・ウラ・ウー」と唱えた。赤ヘルは言った。
「美しい光景ではないか?」
「何がだ!」
「人々が皆調和して一つの行動をしている。それは整然とされてて美しい。それなのに君はそれから外れようとしてる、ごみくずみたいな存在だ。」
「何を!?」
「くずも共に回れば星になる。君のその無意味な反抗をやめて、共に踊らないが?」
「やめろ…」
相田は意識の背後からあの『プチラモラ』が迫りつつある事に気付いた。
「なぜ拒否するのだ。皆踊っているのに。」
「やめろ、」
今や相田の意識に容赦なく「イル・ナンケストラ・ウラ・ウー」が響いてきた。全身が踊りたくてむずむずしてきた。
「もうつらいだろう。我慢しないで踊りなよ。」
「やめろーーー!!!」
「相田くん!危ない!」
突然琉田が相田を押し倒した。それにより相田は急に正気に戻った。赤ヘルはそれに逆上して、「がああああぁぁぁ」と叫びながら口から光線を出した。それは洗脳光線であった。洗脳光線はもろに琉田に命中し、彼女は硬直してへなへなとへたりこんだ。
「琉田!」
そして彼女の腕が突然動きだした。意志に反した動きに彼女自身が「えっ?」と言ったが次の途端体全体が踊り出した。彼女は悲鳴を上げた。
「いや!こんなのいや!助けて、助けっもっけもっ、プーチラモラァ!」
憑かれたように踊りだした彼女に相田が「そんな…」と信じられない思いで呟いた。赤ヘルは言った。
「あとは君だけだ。おとなしく我らの仲間に入るが良い。」
だが相田は「琉田ァァァァァァァァァ!!!」と叫んで無表情に歌い踊る彼女に向かい合った。
「正気に戻れ!琉田!」
「ゲッモッゲモッ、プーチラモラァ!」
「琉田!」
次に彼女が「あなたも一緒に」と言いながら相田を洗脳しようと両腕を上げて
「プチラモ」
と叫んだ時、相田は突然彼女を抱擁した。目からキラリと涙を零しながら相田は言った。
「そんな事を言っちゃいけない…」
手の動きを肩で封じられた琉田は何度も「プチラモ」「プチラモ」と言いながら振り下ろした。そんな中彼は決心して言った。
「琉田…いや、龍子…こんな時に言うのもアレなんだけど…」
彼女は踊りもがいていたが彼はそれをひしっと抱き留めて言った。
「実は好きなんだ…」
突然琉田の踊りが弱くなった。力を弱めた踊りはやがて消失し、憑いたものが逃げたかのように彼女はほんの一瞬意識を失って膝立ちのまま頭ががくんと下がった。そして彼女は顔を上げて相田を見つめて、言った。
「私も…好きだったの…」
そして彼女は泣きだした。
「ごめんね、ごめんね…」「いいよ。耐えられなかったんだろう。」
「ごめんね、ごめん…」
それを見て赤ヘルは一瞬パニックになったが、すぐににやりと笑って叫んだ。
「はーはは!愛は地球を救うてか?貴様等そんな仲良しなら共に踊るがよい!」
そして両腕から洗脳光線を発射し、二人に当てた。たちまち二人の意識に「プチプチ言っちゃうよー」が舞い込んで体が踊り出した。相田と琉田は顔を見合わせた。赤ヘルは死ぬ気で洗脳光線を当てていた。
そして相田と琉田は決心した。前方に走りだしたのだ。何すると赤ヘルが思ったその時、彼は二人に突き飛ばされた。赤ヘルは塔の頂上から転げ落ちた。「プチラモラー、プチラモラー」をバックにゆっくり落ちているように見えた。塔になんどもぶつかって赤いヘルメットが取れ、彼は頭から地面に衝突して命を絶った。
それを合図かのように、今まで踊っていた人々は一斉に一時的に意識を失った。やがてはっきりした時、彼らは自分達が何かから解放された事に気付いた。わあああと歓声が上がった。
翌日に赤ヘルの葬式が行われた。赤ヘルを小さい頃からよく知る知人はこう言った。
「あの人はほんと小さい頃からどこからか拾ってきたヘルメットをかぶっては、プチラモラプチラモラばかり言ってました。あの頃から赤いヘルメットをずっと被っていましたねえ。うん。はい。だからこんな事になったのも一種の定めかもしれません。」
「反ゲモの会」の五人は、一時期は踊りふける姿を見られた事で若干の気まずさはあったが、また再び仲良くなった。唯一以前と違うのは相田と琉田がより仲良くなった点である。これもプチラモラのおかげとも言えるが、数か月後には皆、あの現象はなんだったのだろうと思うようになり、やがて記憶から消え去った。
それからさらに数か月後のある公園。少年真田健一は母親と共に遊びにきていた。健一は走り回るが母親は心配そうに見守っていた。
そして途中彼は木の茂みに入ったが、その時母親は彼を見失い、「健一!健一!」と呼びながら探した。
その時彼は茂みの中に赤いヘルメットを発見した。なんだろうこれ、と思ってかぶってみた。
その時母親は彼を見つけた。
「ああ、ここにいたの…探したわよ。」
その時健一は嬉しそうに言った。
「プチラモラー」
誰か挿絵描いて←




