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第21話

「あれで良かったのか?」


 帰る途中、俺は隣を歩くアイネに尋ねた。街並みは夕日に染まり、一日の終わりを俺達に伝えていた。


「以前の我なら許さなかったじゃろうが、お人好しな誰かの影響かもしれぬな」


「お人好し、か。でも俺はヤゴウがトオンに斬られかけた時、一瞬制止するのが遅れちまったんだ。自業自得だ、罰が当たったんだって思っちまったんだよ。『人を助ける』って言うのが俺の目標だったのに、あんな汚い感情が自分にあるなんて考えた事もなかったんだ」


「ふっ、それで自己嫌悪でもしておるのか?」


 こちらの告白にもアイネは動じず、鼻で笑ってみせた。そこには、俺の本心を知ったことによる軽蔑の色などない。


「今回の件は我の機嫌も大変良かったからこそ、あのような形でまとまったのだ。仮に別のタイミングで同じような目に遭った時は、果たしてどんな反応をしてたものか」


 それに、とアイネは続ける。


「それに貴様は、あのトオンとかいう娘と同時に、我の心も助けたのじゃぞ」


 俺が? でも、俺はあの場でなにもしちゃいない。あの事件では、アイネの高潔な精神がトオンや自警団の心を救ったんだ。


「貴様は我の為に怒ってくれたじゃろう? あのような仕打ちを受けても、仲間がたった一人いるだけで人は幸せになる、救われた気持ちにさせられるのじゃよ」


「怒るだなんて、そんなのは当たり前な事だ。理不尽な目に遭ってる人を目の前にして、ただ黙ってる訳にはいかないだろ」


「当たり前じゃと? はっはっは!」


 こちらの反論のどこがツボにはまったのか、おかしくてたまらないといった調子でアイネは大声で笑った。


「やはり貴様は底抜けのアホであるな!」


「あ、アホ?」


「しかし、笑えるアホじゃ。ずうっと見ていられるアホじゃ。愛おしいアホじゃ。だからせいぜい──貴様はずっとそのままのアホであると良い」


「……今日買ったもの、返してもらおうか?」


「あっはっは! ぜーったいに拒否する! 我は強欲じゃからな、一度手にしたものは誰にも渡すつもりはない! ほらエニシ、ぼやぼやしてないで早く帰るぞ、今日は待ちに待った焼肉なのじゃからな!」


「あ、おい四捨五入して千歳があんまり騒ぎすぎ──まあ、いっか」


 つい先ほどまでのことなど忘れたかのように、はしゃぐアイネの姿を見て、今日もなんとなく良い日だったなという気がしてくる。


 そして、多分明日もきっと良い日がくるんだろうなという、そんな確信にも近い予感があった。


 焼肉パーティーは大盛況のうちに終わった。アパートに残って準備してくれた人間の苦労のかいあってか、会を提案したアイネも大変楽しんでいた様子だったのだが……。


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