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第19話

「ユニークスキルを使うのか」


 俺は自分自身にしか見えないウィンドウを横目に、そう問いかける。ほう、と一層笑みを深めたトオンが応じる。


「『鑑定』スキル持ちとは珍しいな」


「先に言っておくがどんなスキルを持ってようが、俺にはあんたの攻撃は通じないぞ」


 その言葉を受けて、トオンが刀を鞘に治める。当然、戦意を失ったわけではなく、


「ほう、ますますおぬしを切り伏せてみたくなった」


 居合い抜きのような姿勢を取った。すると、俺達の周りを囲んでいた自警団の男たちが焦ったような声を上げる。


「トオン団長! おやめください、あなたがスキルを使ったら我々も巻き添えになります!」


「案ずるな、拙者もそこまで正気を失ってはいない。ゆくぞ、スキル──」


 彼女が口に出すのは俺が目にしたスキル名と同一のものだった。その名は、


「『刃は不断の意志の元、全てを切断する』ッ!」


 一歩、こちらに詰め寄ったかと思うとそのまま下から上へと刃を切り上げた。一般人からすれば恐ろしく速い斬撃だが、俺相手では一切通用しないスピードだ。さっきの峰打ち同様、避けるまでもない攻撃だったが、速度においても勝ち目がないと分からせるべく、あえて俺は体をひねってで回避した。


「──馬鹿な!?」


 トオンは再び自身の一撃が不発に終わったことを悟り、愕然とした表情を作る。こちらとしては逆に拍子抜けした気分である。なんだ、スキルと言っても『ただの素早い斬り』か。


「ふんっ」


 トオンが返す刀で上段から下段に斬り下しをする。やはり遅い。俺は彼女の足を引っかけてバランスを崩させる。


「お、っと、と」


 目論見通り転倒しかけたトオンは、勢い余って刀で地面を叩いてしまう。この勢いなら彼女の刀が折れ、唯一の武器すら失うだろうと思ったが。


「あぶっ」


 切先が向けられた自警団の男たちが咄嗟に回避行動を見せた。無論、トオンの刀なんて絶対届くはずのない距離だ。


 しかし、男の判断は正しかった。トオンが斬りつけた位置を始点として、地面が『切断』された。


 範囲は不明だが、彼女の斬撃は刃の届く届かないに関わらず発生するらしい。


「これはまたすごいな。しかし、当たらなければ意味がないんじゃないか?」


「その意見には同意する。では、拙者の奥義、その目にとくと刻みつけよ」


 二度防がれたにも関わらず、相変わらずトオンの顔には余裕があった。彼女が再度納刀し、必殺の一撃を繰り出そうとしたところで、


「ま、待ってください! 自警団のお方!」


 見ると、先ほど俺達の前で腹痛に苦しんでいた老婆の姿があった。さきほど、自警団員の一人に運ばれていったはずなのだが。


「そのお二人は腹痛に苦しんでいた私を助けてくれようとしたんです! 魔人族の子が持ってる袋は私の持病を抑える薬が入っているんです!」


「なんだと?」


 その証言を聞き、一番驚きを反応を見せたのはトオンだ。さっと顔が青ざめ、自身の思い違いに気付いたようだ。


「一体、どういうことだ……!」


 トオンは、老婆に付き添って病院へ向かったはずの自警団団員に視線を向ける。


「はい。自分がお連れしている途中で、ご婦人が体調を回復されたので、詳しく話を聞けたのですが……」


「ポケットの中に予備の薬があったのを忘れてましてな。……それにしても団長さん、私を助けてくれた親切な方にこのような仕打ちはあんまりじゃありませんか? ろくすっぽ話を聞かずに斬りかかるなんて」


「む、むぅ……ヤゴウ、これは一体どういうことだ?」


 顔面蒼白といったトオンの視線がヤゴウへと向けられる。そう、彼こそがこの事態の全ての元凶といっても過言ではないのだ。


「おぬしは先ほど、そこの二人が老婆へ襲い掛かるのをその目ではっきり見たと申していたはずだが?」


「そ、それは──」


 対するヤゴウは、自身へ向けられた真っ直ぐな非難の目に、視線を反らすことしかできないようだ。そりゃそうだ。


「さっきおぬしが見せたネックレスも盗品の疑いが高いと申していたが」


「えっと、このネックレスですよね。あのーこれは……」


 おどおどと自身のポケットにしまっていたネックレスをヤゴウが取り出したところで、観衆の中から声が上がる。


「そのネックレスなら、わしがそこのお二人に売ったものじゃよ」


 姿を現したのはつい先ほど、俺たちがお邪魔をした雑貨屋の店主だった。

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