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ゾンビになったと追放された俺は人類を救えるかもしれないけど人類は救いようがない  作者: しゃぼてん
5章 ピア・プレッシャーの感染拡大防止効果

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48** 速川良太3

 黒田隊は2階への階段を上がっていった。良太は最後尾をついていった。後ろから見ていると、ちらちらと他の隊員が草野一平を気にしているのに気がついた。

 一平があの注射器で感染したとすれば、早ければもうじき発症して感染拡大行動をとり始めるかもしれない。


(順はどうするつもりなんだ?)


 みんな気にしているはずだ。

 でも、誰も口にはしない。

 いつの間にか、先頭を歩いている2年の木村隆と草野一平と、後続の隊員たちとの距離が開いていた。


「とまれ」


 黒田が声をかけ、木村隆と草野一平をとめた。良太は背後に注意をしながら、ゆっくりとみんなの方に近づいていった。

 廊下は二手に分かれていた。

 右には、長い廊下があり、その先に病室のある病棟がありそうだ。

 今立っている広い廊下を直進することもできる。

 隆と一平は、それぞれ別の方を向いていた。

 一平は、右に進もうとしていて、隆は直進しようとしていた。

 木村隆が草野一平に言った。


「一平、どこに行こうとしてんだよ」


「だって、なんかそっち、嫌な感じだぜ?」


 一平は身ぶるいをしながらそう言った。気のせいか、一平は少し具合が悪そうに見える。


「こっちの方が、なんとなく、走るゾンビがいそうじゃん。ゾンビを避けてもしかたがないだろ」


 隆はそう言ったが、どちらの廊下にも、ゾンビの姿はなかった。

 けれど、どこかから、カシャン、カシャンと、小さな音が響いているように思えるのは、気のせいだろうか。

 相田英斗が黒田にたずねた。


「隊長、どっちに進むっすか?」


 黒田は決断した。


「直進しよう」


 木村隆を先頭に、草野一平、相田英斗という順番で、黒田隊は進み出した。

 しだいに、カシャン、カシャンという音が大きくなってきた。

 聞きまちがいじゃない。まちがいなく、何かがいる。

 一平がつぶやいた。


「なんだこの音……?」


「あの扉の向こうから聞こえてくるっぽい。確認しよう」


 先頭を歩いていた隆と一平が、黒田の指示を待たずに、扉を開けた。


「なにもない」


「奥にもう一つ扉があるぞ?」


「音が聞こえてくるのは、奥の部屋だ。隊長、確認してきます」


 木村隆を先頭に草野一平、相田英斗が続き、黒田の返事を待たずに、2班の3人は扉の奥に向かって歩き出していた。

 黒田が追認するように指示を出した。


「3班の2人は廊下を見張れ。良太、2班を後ろからサポートしよう。近づきすぎるな。数メートル距離を取れ」


 数メートル距離をとれば、小部屋に入らず廊下側の扉のところに立つことになる。良太は開かれた扉の傍で黒田にたずねた。


「了解。ここでいい?」


「ああ」


 黒田も中に入らず廊下にとどまっている。

 良太が廊下から中を覗きこんだ時には、2年の3人は奥の扉を開けようとしていた。

 どうやら、あの先は手術室のようだ。

 良太は銃を構えた。だが、ゾンビが出てきたとしても、ここから撃つことはできない。良太の腕では撃てば仲間にあたってしまう。


 アサルトライフルを持っている相田英斗と草野一平が扉の前で銃を構え、木村隆が扉を開けた。

 扉があいた瞬間、ゾンビが跳びこんできた。

 ゾンビは血まみれで腹部から内臓がはみ出ていた。

 即座に銃声が響いた。

 英斗と一平が、跳びこんできたゾンビにむかって銃弾を撃ちまくった。

 ゾンビは英斗と一平の足もとの床に崩れ落ちた。血の水たまりが広がっていき、英斗と一平は数歩後ろにさがった。


 良太は何もできず、手前の扉のところからその様子を見ていた。

 英斗と一平が叫んだ。


「ゾンビを2体確認!」


「何かを投げてくるぞ!」


 きらりと光るものが飛んできた。とっさに良太はライフルを盾にしながら体を引っこめ、壁の影に隠れようとした。

 飛んできた何かは良太のライフルにぶつかり、床に落ちてカランカランと音をたてて跳ねた。

 黒田が懐中電灯で廊下の床に落ちたものを照らした。

 それは、金属のメスだった。刃には血がついている。

 血のついたメスが奥から投げつけられてきた。

 良太は飛んでくるメスを警戒しながら、顔だけ出して様子を確認した。


「クソッ」


 相田英斗が部屋の奥にいた手術着のゾンビに向かって銃弾を撃ちこんでいた。

 ゾンビが倒れる音と、金属の何かが落ちて散乱する音が響いた。


 ほとんど同時に、木村が上方にむかって発砲した。

 撃たれた物体が破裂し、液体が前衛の2人、英斗と一平の上に降り注ぎながら落下した。良太は二人の足元に落ちたものを確認した。

 投げつけられたのは、輸血パックのようだった。

 英斗と一平は数歩後ずさりながら、部屋の奥に向かって銃撃を続けた。


 数秒後、銃声は鳴りやんだ。手術室のゾンビは死に絶えた。

 黒田は冷静に指示を出した。


「状況を確認する。3班、廊下の様子は?」


「異常なし」

「異常ありません」


 1年の2人が、左右から返事をした。次に黒田は2班の3人に指示を出した。


「2班、その扉を閉めてそこで待て」


 じわじわと嫌な恐怖が良太を襲ってきた。

 2年の3人、特に英斗と一平は血まみれだ。

 返り血を浴びること自体はめずらしくはない。だけど、ここのゾンビ達は刃物を投げつけてきた。傷口にゾンビの血が入れば、感染する。感染すれば……。

 

「こっちを向け」


 黒田は、懐中電灯で2年の3人を照らしだしていた。

 

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