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無神論者の聖女紀行  作者: はっぴーせっと
第1幕 無神論者の転職紀行
45/59

幕間 マリアの場合2

お久しぶりです!今回はマリアパートです。



 この世界に飛ばされてきて、5ヶ月くらい経ったかな?

 私はこの世界で、何だかんだ平穏に暮らしている。


 最初は全然違う世界で、家族も友達もいなくて、正直すごく心細かった。

 でもこの国の人たちは、権力に目が眩んで人間を殺しちゃうような、そんな酷い人たちに大事な家族とか友達が殺されて悲しい思いをしてる。それを救えるのが聖女って呼ばれる私たちなんだ。聖女の私には特別な力があって、それを使えば目の前の辛い思いをしている人たちを助けることができる。それを聞いて不安だった私の気持ちは、「自分がここに呼ばれた意味があったんだ」って、すごく元気が出たんだよね。


 それにここの人たちも、全然違う世界から来た私のことを、笑顔で迎え入れてくれた。

 私は今、パーリツィっていう街にいる。この国では「王都」って呼ばれているんだって。王都って何だろうって思ったら、どうやら日本でいう東京みたいなものらしい。つまり、国の首都ってことかな?


 本当は聖女はあんまり外に出ちゃいけないみたいなんだけど、私はどうしても街の様子が知りたくて、一生懸命お願いをして許可をもらった。


 確かにすごく賑やかで、綺麗な街なんだ。商業地区は色んなお店で賑わってるし、住宅街は色んな人たちが住んでて、貴族の人たちの立派な家とか、商人の豪華な家、平民の人たちのこじんまりしてるけどお洒落な家とか、たくさんある。図書館とか博物館、美術館とかもあって、街の中心街にある広場には、すごく大きくて綺麗な噴水がある。

 大通りには色んなお店が並んでいて、いくらウィンドウショッピングしても飽きないくらい。私は聖女専用の予算があるらしくて、好きなものをいくらでも買えるらしいんだけど、正直高い買い物なんて全然慣れてないから怖くてできない。


 だって、元々ただの女子高生だよ?放課後の定番といったらファミレスで、399円のドリアと190円のドリンクバーがいつものコース。ちょっと贅沢をする日は、529円のタピオカミルクティーを片手におしゃべりをする。


 そんな日常を過ごしてきた一般人が、すごく高そうな生地で一からオーダーメイドするドレスとか、店長さん直々に個室で見せられる豪華な宝石とか、平常心で見れるわけがない。そんなもの、触るだけで手が震えちゃうから!買うなんてもってのほかだし。そんなことにお金を使うなら、美味しいものをいっぱい食べたい!


 そう言ったら、レオが王都で一番美味しいって評判のパティスリーに、何回か連れて行ってくれた。


 連れて行ってもらったパティスリーでは、ケーキの種類がたくさんあって、見てるだけで楽しくなった。つやつやのチョコレートがかかったオペラに、きれいなグリーンのピスタチオ、濃厚なモンブランに、軽やかな風味のシフォンケーキ。それ以外にも、季節のフルーツを使ったムースや、サクサクのミルフィーユもある。

 でも一番の目玉は、何と言ってもあのショートケーキ!王道中の王道だけど、ショートケーキが美味しいお店は他のケーキも美味しい。私が連れて行ってもらったパティスリーは、ショートケーキがほっぺたが落ちるかと思うくらい美味しかった。濃厚なホイップクリームに、ふわふわのスポンジ生地、そして大粒の苺。控えめに言っても最高でしかない。こんなに美味しいショートケーキは、今まで食べたことがなかった。人生損してたなあ。


 最初はレオと護衛の人たちと一緒に行ったんだけど、特に予約とかしないで行っちゃったら、お店にものすごい人だかりができちゃった。何事かと思ったら、聖女と大司教が来た!って街の人たちが見に来てたらしい。私たちの周りは護衛の人たちががっちり固めてたから、近づいては来れなかったけど、代わりにキャーキャー言われたり、「聖女さまお言葉を!」とかよく分からないこと言われたりしたなあ。何か芸能人が目の前にいたみたいな反応。

 まあそれもそっか。だってレオは大司教で、普段は聖都の教会府本部から出ない。年に一度の祝祭のときとか、特別なお祝い事があったときにしか姿を見せないんだって。しかもそれも聖都だけだし、王都で間近で見れるなんて、普通は一生に一度あるかないかだって、メイドのリリーが言ってたな。


 レオもそこまで騒がれると思ってなかったみたい。すごい人だかりにびっくりしてて、逆に「こんなにも多くの人々に、聖女様は崇められているんだね」なんて感動してた。…うん、レオって絶対天然だろうなあ。自分が注目されてるなんて、1mmも考えてなさそうだったもん。


 そのせいか、2回目以降は変装して行くことになった。私は黒髪で聖女だってわかっちゃうし、レオは紫の髪と瞳で大司教だってわかっちゃうから、2人ともウィッグを付けて魔法で目の色を変えて外出してる。


 仕方ないよね。もちろん私も最初は、なんでそんなに変装しなきゃいけないんだろう?って思ったよ。でも、そのままの格好で行くと聖女と大司教だってすぐ分かっちゃって、そうすると街の人たちが恩恵を受けたくてたくさん集まってきちゃうんだって。

 有名すぎるのも、大変なんだなって、初めて分かった。レオは「人々の道標になれるのならば、とても嬉しいです」って言ってたけど、大司教だからって全部が全部頼られるのは、さすがに疲れちゃうと思うんだ。


 だから、次からはちゃんと分からないように変装して行くようにした。レオの紫色の長髪とか、私の黒髪はすごく目立つらしい。だから、ばれないように、レオと私は茶髪のウィッグをかぶっているんだ。


 ウィッグは正直面倒だけど、面倒事を避けるには仕方ないよね。だって、黒髪のまま外に出るだけで、「聖女様だ!」って騒がれるんだよ?髪が黒いだけで何があるんだか、、、全然分からないけど、とりあえず変装しないと街で大騒ぎになる、っていうことだけは分かった。



 今日はそのお忍びデーなんだ。朝起きてから、楽しみすぎてわくわくしてた。今日も屋台であの串焼き食べたいなあ…それからカフェにも行って。あ!そうだ、この前見つけた工芸品のお店も見てみたいな。素朴なんだけど、街の職人さんが一つ一つ丁寧に作ったんだろうな、って分かる、きらきらしたガラス細工が素敵なの。

 教会にあるものはすごく高価で立派だけど、私は元は庶民だし、そういうちょっとしたお洒落なものの方が惹かれるんだよね。メイドの女の人たちには、あんまり理解されないんだけど。


 そんな訳でお忍びの支度をしていたら、ノックの音がした。メイドさんの1人、ロッテさんがドアの外に出て、何やら話してる。何かあったのかな?

 疑問に思っていると、ロッテさんが中に戻ってきて、私に声を掛けた。


 「盾の聖女様。恐れながら、大司教様は急用により、本日の散策の御供が難しいとのこと。よって、代わりの者がエスコートいたします、とのことです」


 「え、レオ来れないんだ。残念…。そしたら無理して王都に遊びに行かなくても良いんだよ?」


 レオがいないんだったら、正直楽しみも半減しちゃうし。代わりって、司教の人の誰かかな?皆んなよくはしてくれてるけど、レオみたいに友達みたいな気軽さはないし、肩こっちゃうからなあ。


 「いえ、聖女様。ご心配なさることはございません。大司教様が直々に推薦なさった方です。聖女様を危険に晒すような事は決してありませんよ」


 「うーん、そういうことじゃないんだけど…ちなみにその人、私が会ったことある人なの?」


 「はい、そのようです」


 「ん?ロッテさんは、誰が来るか知らないの?」


 「はい。御名前は伺っておりません。ただ『盾の聖女様がよくご存じで、高貴な御方である』ということのみ伝言にありましたので」


 「えー、それ私もよくわかんないよ!なにその謎々みたいな伝言…レオも何でそんな分かりづらい言い方したのかなあ」


 レオはすごく真面目だから、いつも何かあればきっちりしっかり連絡してくる。だから、今日みたいに曖昧な伝言をしてくるのは、超珍しい。

 何かあったのかな?言いづらい人とか?でもあんなに良くしてくれるレオが、私が嫌がる人をわざわざ自分の代わりに行かせるはずがないし…うーん、全然わかんない!


 「大司教様のご依頼した方です。信用できる御方ということは間違いないと思いますよ」


 ロッテさんの言葉に、それもそうかと頷いた。

 街にも行きたいしな。


 「そうだね。とりあえず会ってみないとわかんないか!」


 そんな訳で、私は支度をした後、レオが手配してくれた代わりの人に会うことになった。



 待ち合わせの場所は、教会の裏道にみたいな場所。ここは大司教や枢機卿たちしか知らなくて、ほぼ人が来ない。今もメイド長のロッテ以外、私と一緒にいる人はいない。


 一応護衛騎士はちゃんと付いているんだけど、今は目に付かない所に控えているみたい。お忍びで行くときは、いつもそうなんだ。


 「これから来る人って、1人?それとも何人かで来るのかな?」


 「いえ、恐らく1人でいらっしゃると思いますよ。自分の代わりは彼しかいない、と大司教様が仰っていたそうで」


 「ふうん、彼っていうことは、男の人かあ…男の人でそんなに仲いい人いたっけな」


 「…私は、何となくですが予想は付いておりますが」


 「え?!ロッテわかってるの?!だれ、だれ?」


 「盾の聖女様、噂をすればいらっしゃったようですよ」


 ロッテに言われて向こう側を見ると、1人の男性がこちらに歩いてきている。

 その姿をじーっと見て…近くに来て思わず叫んだ。


 「えっ!フィリップさん?!」


 「こんにちは、マリア様。ご機嫌いかがかな?」


 にっこりと微笑んだフィリップさんは、前に見た時と変わらず超美形だ。

 濃密なゴールドの髪はサラサラしていて、太陽の光をキラキラ反射させている。涼しげな目元は同じ色の睫毛で縁取られていて、綺麗な海みたいに鮮やかな青色の瞳が宝石みたい。すっと通った鼻筋に、優しそうな口元、男らしく引き締まった身体。彼は王子という肩書通り、女の子が夢見るヨーロッパの王子様そのままっていう感じ。


 「私は超元気ですよ!フィリップさんは元気でしたか?」


 「政務で忙しかったけれど、マリア様のお顔を拝顔したら、途端に元気がでましたよ」


 「もう、お世辞がうまいんだから!」


 そんな会話をしていたら、横からロッテが会話に入った。


 「盾の聖女様、第1王子殿下。お時間が迫っておりますゆえ。街に降りるなら、お早めに出立なされた方がよろしいかと」


 「承知した。さて、ではマリア様、いざ参ろうか」


 「はい!レッツゴー!ですね!」


 「れっつごー、とは…?」


 「はいはい、殿下、急がないと門限がぎりぎりになってしまいますよ」


 「そうだな、ロッテ殿、留守は頼んだぞ」


 「勿論でございます。では、お気を付けていってらっしゃいませ」


 「はーい!お土産買ってくるね!いってきまーす!」


 微笑むフィリップさんと一緒に、街への道を歩き出す。

 何だか今日は楽しくなりそうだな!




あと1話程マリアパートが続きます。主人公やおじさま編は既に書き溜めているのですが、マリアちゃんのお話が中々進まず…年頃の少女の心境とは如何為る哉?と頭を悩ませる日々です。

ちなみに読者の方々は、主人公、マリアちゃん、ミア、どの女性キャラが気になるでしょう?もし感想ありましたら頂けると幸甚です。

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