4話 散歩
※グロ要素あり
俺もスーパーの中に入ってしばらく歩いていると、野菜コーナーに奏はいた。じゃがいもに人参、玉ねぎが籠に入っていた。ここまでくれば大体察しがつく。話したい欲求に負けた体はすぐに奏の元にまで寄って行った。
「こんにちは、奏さん。」俺は思わず、まだ一度しか会話をしていない異性に名字ではなく名前で呼んでしまった。絶対に気持ち悪がられただろうな。
「あっ、こんにちは…。水谷君。こんなところで会うなんて珍しいね。」
「う、うん。そうだね。」どうしよう、話しかけたのはいいけど何も話すこと考えてなかった。
「あの、水谷君……。」
「は、はい?」鼓動が高揚しすぎて言葉が上手く出てこない。
「私の名前ちゃんと覚えててくれたんだね。」てっきり気持ち悪がられたかと思ったけれど、予想外の返事が来た。言葉が上手く出ずに引かれるのはまずいため、一度深呼吸を置いて冷静さを取り戻す。
「当たり前じゃん。朝のこともあるし、流石に印象に残るって。」朝のこと……。今奏の足の太腿は包帯で巻かれている。スカートの裾から白い包帯がちらちら覗いている。
「その足、大丈夫?やっぱ歩くと痛い?」気になっていた質問が今更ながら頭に過り、躊躇わず、質問した。
「最初はやっぱ痛かったけど、今は特に気にならないかな。でも、お風呂に入ったら絶対痛いだろうな……。」勿論口には出さないが、ほんとにごめんなさい、ともう一度心で謝っておきました。
「カレーでも作るの?」何となく聞いてみたら。
「うん。水谷君も食べにくる?家一人だからなんか寂しくて。」
「俺なんかが行っていいの?」
「勿論いいよ。そんな遜らなくてもいいのに。」奏は笑った。二回目の人生だっていうのにそんな顔初めて見たな。
ずっとこんな日が続けばいいのに。
奏の人生の選択が迫ってきている。俺はどうするべきなのだろうか。奏に未来に起こることを言ったところで信じてくれるわけがない。死ぬ未来を言われて信じる馬鹿は流石にいない。だとしたら、時間稼ぎぐらいだろうな。
「水谷君も来るし、早く作るね。家はこっちだからおいで。」せっかちなところも可愛いですけど。
「ちょっと待って。二宮さん。」時間稼ぎどころかショートカットしてしまった。今現在横断歩道で信号待ちしてるんだけど非常にまずいよね……。
「あれさっきは奏さんって呼んでくれてたのに名字になってる。」ちょっとにやつきながら何かをたくらんだその言い方は、かなり親しみがこもっていて嬉しいようで対抗したくもなった。けど、こんな会話をしている場合じゃない。
「水谷君信号青になったよ。渡ろう。」多少強引な手だがこれしか見つからなかった。
「待って。」俺は奏の腕を掴んで思いっきり手前に引いた。その刹那トラックが突っ込んできた。幸いこの場にいたのは俺と奏の二人だけだったから事件になることはなかった。
「えっ、死ぬかと思った。水谷君ありがと……。」奏は震える身体を抑えながら言葉を言いきった。俺は黙っていることしかできなかった。もし、このまま会話をして「どうして、あのトラックが信号無視するのが分かったの?」なんて言われたら、どう答えたらいいのかが想いつかなったからだ。俺はこの日奏を家まで送ったが、奏のカレーを口にすることはなかった。
次の日になり学校に行ったが奏に話しかけられることはなかった。奏は早くも友達が出来ていた。瑞山結菜、彼女は学級委員で積極的に動く性格みたいだ。下校時間になり帰るときも奏と瑞山は一緒に帰っていた。奏に友人が出来て安心した。
そして気になっていたのが真っ白になった青い石だ。あれから、未来の元の時間に戻れないか何度か試してみたが、戻ることは出来なかった。逆にさらに過去に行こうとも試してみたがやはりだめだった。それだけ過去に戻る力は反動が大きいと解釈した。さらに青い石が過去ならば、赤い石は未来に行くことが出来るものだと思っていたが、別にそういうわけではないという結果も得られた。次の課題は真っ白になった石の存在意義についてだ。この石にはもう使い道がないとも思ったが、時間が経つにつれて少しずつではあるが白いもやが消えていってることに気が付いた。もしかすると、また過去に戻れるようになるかもしれない。白い石に関してはこれ以上考えてももう何も出てこなかった。
夜の八時、俺は気分転換に散歩に出かけた。家は田舎だから、全く人気がない。この解放感に満ちた感覚は都会にいる人には味わえないだろうと優越感に浸っていた。
急に猛烈な頭痛が走る。
奏の未来を予知した時と同じような痛みだ。それでもこらえて必死に目を開けた。
すると、正面に俺がいる。俺の後ろの人間の視界でも見ているのか。勢いを変えず俺に近づいてくる。人間でありながら野生動物の本能が俺に訴えかけてくる。
逃げないとやばい。はやく、はやく、逃げろ。
俺の身体は何かに拘束されているみたいに全く動かない。そして、追いつかれた。
俺は、自分で自分の身体を酷く痛めつけ、殺してしまった。
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