エピソード0 日本政府交渉編 前編
つくり直しを含めた第一歩的な感じです。
個人的には改憲派ですが…この話は護憲派が正しい感じになっています。こういう矛盾した正義を描くのが大好物です。
これは日本国政府内でSPQAとの開戦か和平かを巡る論争を描いた物語である。
この時代の日本は相変わらず憲法を改正出来ずに与党の立憲改正党が永遠と憲法改正を掲げて政権与党として君臨していた。日本が憲法改正を望む理由として大きく掲げていたのが軍隊の保有を禁止し、戦争を行うことを否定した憲法九条である。この時代において既に憲法九条は事実上無視されていたとはいえ存在したのである。
総理官邸にある会議室では日本国政府の政府閣僚が集まって会議をしていた。時の総理大臣である飯田隆総理は憮然とした態度で深々と椅子に座っていた。
「アメリカの核による先制攻撃を認める行為は日本国憲法に違反する行為であり、断じて認めるわけにはいきません!!」
内閣官房長官の河野康平は大きな声で自らの持論を論じた。この時、日本で一番問題となっていたのは同盟国アメリカの動きであった。アメリカは宇宙人達が求めて来た降伏勧告を受けて核による先制攻撃を行おうとしていた。そのためにアメリカは核保有国及び同盟諸国に参加と同意を求めて来た。
このアメリカの要求は今日までの日本政府の立場を揺るがすほど重要な要求であった。何故ならば日本政府は集団的自衛権は認めていても先制攻撃による開戦は認めていなかったからである。ましてや保有を禁止し、核による平和を否定し、核拡散条約を推進している国だからである。国民に至っては核の廃止を訴える人々がおり、消極的だが国民の大多数は核に否定的であった。
そんな国が今日まで築き上げていた政府の建前をダブルで憲法違反して認めるなどあり得ない話であった。論外であったと言ってもよかった。アメリカの要求は宇宙人の要求と変わらないほど理不尽であった。
「河野内閣官房長官殿、現在は非常事態です!地球の危機です!!このような状態で憲法が、どうのこうの言ってる場合ではありませんぞ!!」
防衛大臣の浅野一郎が河野の意見を真っ向から否定してきた。彼は熱烈な愛国主義者であった。
「なにを言うか!宇宙人と地球人の力差は歴然なのに戦争をしようと考える方が間違っている。何も彼らは我々を殺そうと言っているのではない、それに交渉の余地はまだ残されている。」
河野は宇宙人達の自信溢れる態度、そして電波ジャックに銀河外から地球まで大軍で来る能力を考えた結果、地球の力では彼らに勝てないと冷静に分析していた。と同時に宇宙人達が中々攻めてこないのは我々と同じで建前を重視する民族だと逸早く気付いていたのである。そこに河野は活路を見出していた。
「交渉の余地だと!無条件降伏を要求している時点で交渉など出来ないのは自明だ!!」
「それは違う、第二次世界大戦時にアメリカが日本に無条件降伏を要求した。この時の日本政府は貴方と同じことを言ったが…しかし、実際には日本政府が考えていたほど厳しいものでは無く、もっと早く要求を呑んでいたら原爆が落とされることも北方領土を失うことも無かった。この事実から考えても…我々は宇宙人との交渉に力を入れるべきである。」
「変なことを言う!もし、日本が参戦しなかったら国際社会は日本を許さないのは間違いない。そうなれば同じ地球人から攻撃されることになるぞ!!」
「確かに、その通りだ、だからこそ、今は時間稼ぎをするべきだ!幕末の幕府が要求をのんだフリをして時間を稼いだように我々も時間稼ぎを試みるべきである。」
「話にならん!」
河野と浅野が激論を交わす中で経済産業大臣の松下が震えていた。それを見て取った河野が松下に意見を求めた。すると松下は震えながらも自らの考えを述べた。
「私は…宇宙人との戦争に反対です。何故ならば日本の経済を考えた時、宇宙人達と戦争をすれば甚大な被害は免れません、そのような問題を経済産業大臣の立場として容認する訳にはいかない。」
松下の苦し紛れの言い訳であった。実際は自らの責任の重さに耐えれなくなっていただけかも知れないのである。だが、それでも緊迫した状況下で松下と同じように震えていた他の閣僚達には充分に松下の意見は正論に映った。
「総理!!」
この流れに焦ったのか浅野は咄嗟に総理に助けを求めてしまった。これは痛恨のミスであった。総理の飯田は一瞬浅野を鋭く睨んだ。そして総理は強引に結論へと向かって口を開いた。
「地球人類存亡の危機である!この危機に対して我が日本国は国際社会を協力して宇宙人達に対して共に戦わねばならない!!」
これを聴いて内閣官房長官の河野は怒りを露わにして総理に食ってかかった。
「今こそ、日本国憲法と憲法九条を盾にして国際社会に戦争の無意味さを主張するべきです!!」
憲法改正派の首班とまで言われた河野とは思えない発言に他の閣僚たちは驚いた。同時に自らの持論を曲げてまで戦争を阻止しようとする河野姿勢に感動する閣僚も現れた。その一人が松下であった。
「総理、もし戦争をするのであれば!私は経済産業大臣の地位を辞任させて頂きます!!」
「構わんよ…」
総理が松下の意向に同意すると松下は勢いよく机を叩きながら席を立つ、そして、そのまま会議室を出て行った。
こうして日本政府は宇宙人達への核による先制攻撃を容認したのである。
逸早く会議室から出て来た松下を見つけた各メディアの記者達は松下の周りを取り囲んだ。
「大臣!何があったのですか?」
「今日付けで私は経済産業大臣を辞めました。」
「!?」
余りに衝撃的な松下の発言に記者達は驚いて言葉が出ない。その姿を見ながら松下は自らの自説を説いた。
「我が国日本は憲法によって戦争という手段での最終的な政治的解決を否定してきました。にも拘わらず、戦争によって平和を維持しようという判断を今日下したことは戦後日本の歩みの全否定であり、戦後日本社会が欺瞞に満ちた嘘の社会であったことを如実に表すものとなったと私は考えます。このような愚劣な判断によって美しき日本が破壊され、宇宙人に蹂躙する姿を私は見たくありません!また、日本の経済が大義無き戦争によって破滅する責任を私は負いたくありません!!」
そう発言すると松下は迎えに来ていた車に乗って去っていく、それを追う記者達が叫ぶ「だいじいいいい!」その叫びを聞いても止まらず去っていく車に記者達は無責任な大臣の姿を見るのであった。
その日、松下は地球人類による核による先制攻撃と、その失敗を見届けた後に自室に入り、自らの腹を小刀で裂いて自決した。
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