陽気な戦争
1番
ジョニーよ銃を執れ、銃を執れ、銃を執れ。
取ったら走れ、走れ、走れ。
彼らが我らを呼ぶ声が聞こえる。
全ての自由の息子達よ。
さあ急げ、遅れるな、今日中に。
「素晴らしい息子だ」と父親を喜ばせる為に。
恋人には「恋しがるな」と伝えよう、
そして「最前線の我らを誇りに思え」と。
(繰り返し部)
「向こう側」へ、「向こう側」へ。
伝えろ、伝えろ、「向こう側」へ。
ヤンキーが来るぞ、ヤンキーが来るぞ。
どこへだろうと戦鼓を鳴らしてやってくる。
だから備えろ、さあ祈れ。
伝えろ、伝えろ、「用心せよ」と。
我らは超えてくる、海を超えてやってくる。
そしてやり遂げるまで戻りはしないのだ。
(繰り返し部)
歌:オーヴァー・ゼアより
こんな歌が聞こえてきそうな陽気な戦争が行われていた。
「戦争は数だ!!一部の評論家が言う、物量の時代は終わった!無能はいらない!!高価な兵器を操れる優秀な兵士さえいれば戦争は勝てるのだ!!と捲し立てる。しかし、歴史上に高価な兵器が安価にならなかった例は無い、優れた兵器は単純かつ誰でも使える強力な殺戮マシーンであり、優れた兵士は常に貧しい者から出てくる。何故ならば、頭の良い奴は兵器を作るか命令をするだけであるからだ!!中間の奴らは戦術を考えて指揮を執り、貧しい奴が実際に戦う、それが戦場である。」by青葉
「連合国の奴らは、我々共和国とは違う、戦に負けると敵を執拗に追い立てて消耗させる戦術に出てくる卑怯者の集まりだ!!奴らは自分達が負けそうになると決断を避けて決定的な打撃を避けつつ逃げ惑うのである。そして反撃の機会を狙うのだ!彼らに打ち勝つには戦争をする前に彼らに戦争をする大義を与えないことである!!」byフィツァー提督
戦争が長引くことで共和国は窮地に追いやられた。今だ国力は十分にあるが兵器の生産が間に合わなかった。さらに補給線が貧弱で十分なウルムへの支援が出来ずに時が過ぎていくのを傍観するだけとなった。
ウルム共和国は開戦後、国力が低下する前に食料危機が襲ってきた。ドイツ人が使った。「欲しがりません!!勝つまでは…」という標語の意味する深刻な飢餓に陥る事態となってしまった。資源が尽きたら…国力差が…という話など無意味だったほど食料の不足によるダメージは大きかった。
日に日に弱るウルムに追い打ちをかけたのは連合国による情報戦による国内に精神的ダメージを与える作戦であった。元々からして政治体制的には連合国そのもので長らく連合国の一部だった国である。国民性は似ていた。そこにある日、『ウルムの共和主義者による殺戮』という映像がウルムの民衆の目に移った。それは捕らえられた連合国の兵士たちが殺される姿であった。対照的に連合国に捕らえられた共和国兵が美味しそうに食事を食べているシーンも映し出された。これは彼らに二重でショックを与えた。
ウルムに駐留する共和国の兵士たちは時間が経つにつれて疎外感を味わうこととなった。最初は暖かく向か入れてくれたウルムの民衆も同じであった。何故ならば両国の政治体制は全く違ったし、精神的な面もかけ離れていた。異質な者への嫌悪が強まりだしていた。
フィツァー提督に負けて以降、連合国はウルムに対して消耗戦を挑んでいく、それに対して必死に現状を打開しようとフィツァー提督は連合国に攻撃を仕掛けるが常に後方に付いて回るスプルーアンス艦隊に邪魔されて上手くいかない、スプルーアンスに戦いを仕掛けようとするとスプルーアンスの艦隊は一目散に逃げ回るのである。諦めて別のを攻撃しようとするとスプルーアンスの艦隊は戻ってきて後ろを付いてくるの繰り返しである。
さらに連合国はフィツァー艦隊から遠い場所を攻撃して物理的にも消耗を図っていった。
ウェルダンでの敗北後、それまで頑なにサザーランドを遠ざけて来た保守派は態度を一変させる。これは連合国の昔からする汚い手であった。硬直的な他国の組織と違い、柔軟な連合国は負けると戦いを避けつつ打開のために優秀そうな人材に声を掛けて意見を募った。そして彼らはサザーランドしかいないと知ると呆気なくサザーランドを呼び戻した。
「助けて!サザーランド!!」
という訳である。サザーランドは地球から帰国する途中で母国のアルゴニアに立ち寄った。
アルゴニア王国は連合国の南にある、連合国の有力国である。この国は現時点では本格的には参戦していなかった。アルゴニアの王の名前はアルベリヒト三世である。今だ弱冠二十代前半の若き王は既に地球侵攻作戦でアメリカを下し、自国にアメリカ文化を持ち込んで大いにアルゴニアを繁栄させて絶対的権力者となっていた。
「サザーランド君、ようこそアルゴニアへ!!」
首都アルゴスにある、大宮殿に入る為の階段で宮殿に入ろうとしたサザーランドを迎えにきたのはアルベリヒトその人である。
「これはアルベリヒト様、お久しぶりでございます。」
二人は仲良く宮殿に入っていった、因みにアルベリヒトは赤い軍服に黄色いマントをしていた。頭には元老院から授かった樫の冠が載せられていた。二人の後ろをサザーランドの側近と豪華な服を着た貴族たちが続いた。
ホワイトハウスの執務室を再現したアルベリヒトの執務室に二人で入るとアルベリヒトは執務室の机の横に置かれていた。コーラの絵が描かれた冷蔵庫から瓶入りのコーラを取り出してサザーランドに渡してラッパ飲みしてみせた。
「どうかね、この味は!完全に地球のと同じだろう!!」
「全く同じですね」
ハッハハと二人は笑う茶番が繰り広げられた。この後も終始茶番である。実際には既に決まっていることを今決めるように見せるだけのパフォーマンスでしかなかった。
サザーランドがエレガス・ウルム戦役に参加出来ないと知るとアルゴニアは戦争に消極的な対応しかしなくなっていた。そうしていたらスプルーアンスが負けたことをアルゴニアの民は知って激怒した。名誉が傷つけられたと感じたのである。そこでアルベリヒトは以前からサザーランドと約束していた戦力拠出の約束を持ち出してサザーランドに戦力を率いらせて名誉挽回を図るという策に出たのである。
こうしてアルゴニアはサザーランドに自国の兵を預ける形となった。戦力は戦艦16隻、強襲両陸艦4隻を主体とした艦隊と総兵力3億7千万人である。この動きに便乗してミレトスが『青葉を救え!』のスローガンで追加の戦力2億4千万人を送ることを決定した。ネスティーゼも本格参戦を決めて2億5千万人、元周国が10億以上を出した。その他連合諸国も拠出した。
サザーランド新ウルム方面連合国司令官の元に戦艦32隻、強襲両陸艦16隻を主体とする艦隊と総兵力30億人を率いて向かうことになった。(多数の地球人が含まれていた。)
クロージア・エレガス方面連合国軍司令官は幾つかの軍事行動を行った。
①先の海戦の被害艦を901星系に送って修理する。この時に山陽も一緒に送り、山村ミサに新兵を訓練させる。(優秀な攻撃兵が山村ミサによって育成され、ミサミサにされた。)
②先の戦いで悔しがっているネルフィアを902星系のウルム方面に派遣して要塞化と軍事基地建設させる。(ネルフィアは名誉挽回に燃えていたため本気だった。彼女は優れた砲撃陣地を築きあげる。)
③902星系を包囲しようとする敵の邪魔をするため、ゲリラ戦術で攻撃を仕掛ける。(クロージア自ら陣頭指揮を執った。)
④敵の補給路遮断を行う、遮断範囲の拡大も行い、敵を締め上げる。さらに前線基地の建設まで行って敵をおびき寄せる。(攻めるのが大好きなクロージアらしい大胆な発想である。)
午後のティータイム
「だから、ここはこうするんだよ」
午後のティータイムはお酒を好んで飲まない、甘党の青葉にとっては好都合な話の場であった。ここで青葉は得意げに自らの政治、経済、軍事、そして戦術を集まってきた兵士たちに話して聞かせた。これは特別任務が開始された辺りから本格的に行われ始めた恒例の行事になっていた。
出席者の中でも青葉と同じテーブルにいた、三人は特に熱心に聞いていた。三人とはロッテラン、テオ、ビルゲである。ロッテランは毎度の如く熱心に手帳にメモをとっていた。テオとビルゲは真剣に話を聞いていた。
「僕は~を考えるに…」
青葉にとってこれほど自らの虚栄心を刺激する舞台は無かった、最初は秘書みたいに付き人になったロッテランに淡々と言って聞かせていたが…それがロッテランに良いように煽てられて口が滑らかになり、家柄の良いロッテランが余りに素直なので調子に乗った結果である。
ロッテランは大公家の次男で貴族である。軍大学では微妙に成績が悪く、秀才にもかかわらず目立たなかった人物であった。彼は反骨精神が強く、正義感があり、直言タイプの将校であった。その彼が青葉のような人物に興味を持ったのは珍獣を見る好奇心からだったからかもしれない。しかし、青葉の大仰で誇大妄想的な思想はロッテランの心を捕えて離さなくなった。(繰り返すが青葉はロッテランというお貴族に話を聞いてもらって口が滑らかになっていた。本人は冗談のつもりかも知れないが冗談に聞こえないことが青葉の性格だった。)
白風特別隊が始まってからはロッテランは才能を開花させた。元々が育ちが良く、頭脳明晰な彼は青葉の考えを完璧に理解して動き回るようになった。少しづつ補助から縁の下の力持ちへ進化していった。
テオは武家出身で東部連合の名門の家の生まれである。武名は知る人ぞ、知る家柄である。彼が白風に志願したのは偶然だった。元来、彼は人を選り好みする偏屈な性格の持ち主である。だが青葉とは波長があったらしく、大人しく青葉の横で話を聞くようになった。
ビルゲも東部連合出身である。こちらは一般人ではあるが市民の出ではあった。連合国の士官学校に奨学金で入り卒業後、名誉を勝ち取るべく、青葉の指揮する特別任務に志願した。テオとは出身国が同じだったためシンパシーを感じてか友人となった。
午後のティータイムは青葉にとっては愉快な安らぎの場であったが…周囲の兵士たちにとっては全く違うものに変質していた。
日光浴
青葉達「白風」は902星系を出発する。航海は順調に始まった。そんな中でいつも通りに兵士たちが艦の外に出て遊び始めた。
宇宙とはいえ、シールド圏内なら空気もあり、安心の為に兵士たちは外で宇宙サッカーや兵士ごっこ(子供が良くやる兵士に扮した遊びの事)をして遊んだ。
船体の上では水着を着た兵士が甲板上で日光浴や「かくれんぼ」とかビーチバレーをしていた。ジェニファー達に至っては堂々と主砲の砲台の上で日光浴をするほどである。
編成
第十三遊撃艦隊
艦隊司令官:マクシミリア
作戦参謀:青葉
攻撃指揮官:ジェニファー
艦隊旗艦:巡洋艦「ライプツィヒ」
巡洋艦:ザイドリッツ、軽巡洋艦:最上
駆逐艦13隻(白風含む)
敵海域において戦闘を行う任務で出撃して一路、902星系から左翼側(南方面)に移動した。
その後敵輸送船団を襲撃して勝利を繰り返す。敵の艦隊が現れて追い回されて超重力地帯に逃げるというハプニングがあったが死者も被害も出ず順調に通商破壊に成功しつつあった。
追い詰められたウルムを救うべく、共和国は一大反抗作戦を画策する。それと同時にフィツァー提督も補給線確保のため、軍事行動を開始した。
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