アメリカ侵攻(後編)
上空を一つの戦闘機が飛んでいた。飛行機の名はF22戦闘機、通称ラプターである。そう、地上最強の戦闘機である。この飛行機はマッハ3近いスピードでワシントンのホワイトハウスに向かっていた。
「ハロー!ハロー!!」
といきなり外から聞こえてきた時はパイロットは幻聴を疑ったに違いない。しかし、幻聴ではない。パイロットが横を向くと軽機関銃を持った兵士が手を振っていた。兵士の心臓は止まる勢いだったに違いない。
兵士は少し考える素振りをした後に腰に付いていた爆弾を取り出してコクピットの窓に取り付けて満足そうに笑顔で手を振りながら遠くへ離れていった。
絶望しかパイロットには無かった。彼は生気を失ったように設置した爆弾を見つめて悟った。
次の瞬間である。爆弾が爆発したのは…当然のようにF22は爆散した。
一連の映像は加害者視点でリアルタイムにネットに流されていた。
「なんだ?鳥みたいなのが飛んでるぞ!」
「面白そうだからおとそうぜ!!」
みたいな会話が入っていた。そしてピクニックでも行くようなノリでF22に接近して上記のようなことをしたのである。
アルベリヒトのホワイトハウスでの『大統領、火炎放射で火達磨』事件はネットにリアルタイムで配信されていた。ご丁寧にアメリカ軍の全ての端末に送られていたほどである。
これを見てアメリカ人はどう思ったのだろうか?どのようなことを考えようと無意味な状況になりつつあった。
何せ、最高司令官の戦死である。すぐさま「副大統領を!!」「上院議長を!」みたいな感じで対応しようとしても無駄であった。全ての大統領継承権所持者が捕らえられていたからである。そのことも分かりやすく説明された動画がアメリカ軍の端末に送られていた。
そして送られた直後に今までやっていなかった電波妨害が始まったのである。アメリカ軍は収拾不可能な大混乱に陥った。これら全ては大統領執務室で椅子に座っていたアルベリヒトの指示で行われた。まるでアメリカ大統領になったかのように振る舞う姿はネットに中継されていた。
ここからは大虐殺の始まりだった。指揮系統が完全に崩壊したアメリカ軍は組織的抵抗力を完全に失った。抵抗しようと努力しても無駄である。それまでと違って本腰を入れた帝国軍の攻撃は凄まじく、天は赤く染まり、地上は地獄絵図が繰り広げられた。
まず目につくのは火炎放射器の完全解禁である。戦車だろうが何だろうが『とりあえず火炎放射してれば良くね?』みたいなノリで戦車が溶けるまで火炎放射をする光景が繰り広げられた。
上空から火炎放射器を持った兵士が戦列歩兵のように並んで飛びながら火炎放射する姿もあった。
それと遅れていた火砲と支援部隊が到着した。ノロノロと支度していた彼らにアルベリヒトの檄が飛んでスッとんで来たのである。トリガーハッピーの如く重機関銃が容赦なく、アメリカ軍を襲った。
火砲も重機関銃も空には流石に固定できないので地上で使われた。慣れない感じで兵士たちが地上で右往左往して準備していた。大部分は生まれてから一度も地上に降りたことの無い市民出身の兵士が多かったためである。
にしても兵士が学校や病院を攻撃しないのに教会には攻撃したのは皮肉である。もちろん立派なのには攻撃しなかった。豪華だからではなく、彼らの一般的な教会のイメージに一致していたためである。略式の教会は帝国兵たちには理解されなかったようである。故に略式教会に避難した人たちは運が悪いとハチの巣にされた。
一般人にはなるべく攻撃しない方針は変わらなかったが…彼らの常識は第二次世界大戦レベルの意識だったので地球人から見れば完全な虐殺であった。
不運は続く、アメリカ人は『銃で武装していた人が多かった。』これを帝国兵士たちは建物の中にいる人まで見えるかのように正確に武器を所持している人を撃ち抜いた。レーザー銃の真価発揮である。
「なんだこの国は!!軍服着ていない兵士が多いぞ!!」
これが帝国兵の考えていたことである。
首都ワシントンでは意識的な虐殺が始まろうとしていた。政府関係者に踏み絵の如く質問が浴びせられる。
「あなたは帝国に従いますか?」
意図は言うまでも無い質問である。された方も理解していたに違いない。しかし、意外に拒否する人が多かった。中には「国民主権万歳!!アメリカ万歳!!」と叫ぶ忠誠心溢れる人もいた。
だが無慈悲である。彼らは引きずられるように『リンカーン廟』に押し込められた。そして廟は封鎖された。
それは生中継されていた。廟に爆弾が取り付けられていく様がである。爆弾が取り付けられると無慈悲に爆破された。
拒否しなかった政府関係者は目の前で観客として見させられたのである。
無慈悲攻勢はつづく、アメリカの国旗は帝国兵によって見つけられると足蹴りされた。掲げられていたものは引きずり落とされた。
アメリカとの和平交渉は?と思う人がいるかも知れないがアルベリヒトは中央政府とはしないことを決めていた。アメリカの憲法を使って自然消滅を仕掛けたのである。
州政府と交渉を始めたのである。州政府に対しては寛大であった。州の旗には酷い仕打ちがされなかった。
州政府と単独でアルゴニア政府が個別に和平交渉をしてアメリカを崩壊させたのである。
その後、首都ワシントンでは盛大なアルゴニア軍の軍事行進が行われた。
アメリカの議事堂前にリンカーン廟の焼き焦げたリンカーン像の頭を切り取って置いてあった。
議事堂の上空に赤い軍服を着た、アルベリヒトを中心とした側近たちがいた。
その目の前を整然と軍隊が行進した。これまた赤い軍服である。地上を通常の歩兵が行進し、頭上を突撃歩兵が行進するのが帝国風である。
行進はドイツ風ではなく、アメリカ風なのは皮肉というにはあまりに残酷な光景だった。
とりあえずアメリカ侵攻の話は終了




