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獄門島にて


私は暗殺組織のヤタガラスのメンバーのカガリだ。いや、『元』メンバーだったと言うべきか?

なぜならこうして敵に囚われているからだ。先月の公国の女王暗殺に失敗して上に敵の捕虜となる失態を晒したからだ。こんな無様なことはヤタガラスでは即死刑なぐらいに恥辱なことだ。


敗因は自分の戦力不足かもしれない。だが奴等の兵力にも一因があるかも。見たことない服に謎の武器。公国でマスケット銃という武器が開発されたとか聞いたがそれ以上の代物だ。これさえあれば公国など数日を持たずに陥落できるだろう。こんな素晴らしいものを持っていたとは益々公国を落としたくなった。


しかし、密通している貴族からはそんな武器開発してないと返事がきた。しかもどこぞの国と同盟を結んだらしく、その国があの強力な兵器を保持してるらしいのだ。


「さっさと歩け!」


あの兵士がいい例だろう。斑模様の戦闘服に黒い武器。まさしくあれが噂の国の兵士か。


私は今、その国の領土といえる小島に収容されようとしている。『獄門島』と呼ばれる島の施設らしいがどうせひどい目に遭わされるのは目に見えてる。


帝国では敵国の人間に対しては容赦しない。男なら労働力として道具のように酷使され、女なら性の捌け口として慰め物にされる。どちらも絶望にひれ伏しながら自ら命を絶つ者も少なくはない。私も見ていて苦だった。やりすぎだ。そう思い続けてきた。しかし私一人の力ではどうすることもできずにただ彼らの死期を眺めていただけだった。


「ほら、ここだ」


いつの間に独房へついたのだろうか。扉は見るからにして丈夫そうな鉄の扉だ。


「ここでお前は生活することとなる。朝8時から12時まで働きその後、1時間の昼食に昼休みを挟み5時まで働く。9時就寝までは施設内で自由時間だ。わかったか?」


私は驚いた。今の説明を理解したくとも出来ないからだ。

昼食を除けば8時間労働することだ。帝国ではひどいときは12時間、軽くても10時間は労働される。だがこれほど充実した厚遇は初めて見た。しかも昼食付き。よほどのお人好しなのか?


「ま、待ってくれ!今の話はほんとか?」


「?。何を言ってる。これが総督の出した命令だ。私達はそれに従ってるだけだが・・・。それより昼食の時間だ。食堂はわかるか?」


「あ、ああ」


「なら案内はここまでだ。くれぐれも脱出しようとするなよ?しても無駄だからな。」


するとその兵士は私の手錠を外してどこかへと去っていった。



/※/



食堂に来ても驚く。

皆、生き生きと輝かしい笑顔で食している。清潔な服に中々の食事。とても囚人に出す礼遇ではない。


「おい、そこに突っ立ってるな。早く食事を済ませ」


兵士に言われてトレーにのった料理を食べてみる。メニューはパンにシチューのような料理。見たことない料理だな。

どれ、味は・・・


「う、うまい!」


こんな料理は初めてだ。このパンもふわふわでかなりの位の高い貴族が食うような代物だ。


なんでこんな厚遇なのかと近くの同じ囚人に聞いてみる


「さあ?わからないな。」


「そうか・・・」


「だが、この国の王様はかなりの慈悲深いらしいぜ。だからこんなもてなしをしてくれるんじゃないか?」


慈悲深い?囚人にでさえこんな礼遇をしてくれるのか。なんだか私はその王様とやらに好感が生まれた。



/※/



この施設に入れられて数週間は経った。ここの労働は大変だが不思議と不愉快ではなかった。

食事も美味しく、怪我をしたら治療所へ行けば治してくれる。私はなんだかここの暮らしに満足していた。


いつもヘトヘトではあるがふかふかのベッドで横になるだけで朝にはしっかりと疲れがとれている。かなりの上質のいいベッドだな。


そして私は兵士に独房から出されてある場所へ向かっている。


今日は面会らしい。ここ数週間のうちに数回は面会があった。今日も部屋の中央がガラス張りになっている部屋に連れてこられた。


「よう。元気か?」


そこいたのは女王の避暑地で私が捕まった時に女といた男だ。見た感じ、ひ弱な優男だがこうして何回も面会してくきた。これで5回目だ。


「またお前か。なんのようだ?」


「こちらが調べたところ、お前はヤタガラスとかいう暗殺組織だな?」


「そうだ」


「ならいくつか帝国のことを知ってるのではと思ってな。どうだ?話す気になったか?」


「誰がお前なんかに話すか」


「貴様!カオル様に向かってなんて口を・・・」


カオル様?こいつはそんなに偉いのか?たしかになんだか畏まれていたようには見えたが。


「なあ、お前って何者だ?」


「誰にそんな舐めた口を聞いている。この方は我々を束ねる総督、カオル様だぞ」


「総督?」


「分かりやすく言えば、王様ってわけだ」


「王様!?」


「ああ、そうだ。」


こいつがこんな礼遇の発端となった男か。なら


「なんでこんなに豪勢な待遇を?」


「待遇?」


「『捕虜は情をかけることなく蝕め』これが帝国の理念だ。しかしこの国は捕虜を労働するも、昼食や充分な睡眠までさせる。なにか裏があるのか?」


「そんなことないさ。捕虜でも立派な人間だ。ただそれだけさ」


「・・・ふっ、甘い男だな」


「よく言わせるさ。それが俺の理念だ」


「いいだろう。すべて話す」


それから私はその男にすべてのことを話した。現在の帝国の情勢や内部関係、武力など話せることは話した。これで裏切り者だな。だが不思議と悪い気分ではなかった。









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