第24話Ifrit(イフリート)
「お、おい。今、なんつった?」
「だからのぉ、イフリートは元気にやってるかと聞いておるんじゃ」
「なんで、知ってるんだ」
「何回も言わせないでほしいのぉ~、お前はわしの子なんじゃ」
「知らねぇつってるだろ!」
「らちが明かんのぉ~、我慢するんじゃぞ」
老人は誰にも何が起こったかわからない程速く俺の腹に肘うちをしてきた。やられた俺ですら気づいたときには老人は倒れていく俺のことを抱えていた。
なんとも言えない気持ち悪さと痛みが重なり、意識が遠くなっていく。
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「起きるんじゃ~」
老人に頬を叩かれながら声が聞こえる。重いまぶたを開けると黒い世界が広がっていた。
「やっぱ、じじぃの正体は陽だったか」
笑みをこぼしながらイフリートは老人に向かって話した。
「これは、いったいどうなってんだ?なんでじいさんはここにいるんだ?」
「落ち着けよ、いまから教えてやったからよ」
イフリートが溜め息まじりで言った。
「このじじぃの名前は陽、お前の祖先って言った方がいいのか。こいつは四百年も生きてるんだからよ」
「四百年なんて普通の人間が生きられるはずがない」
「普通の人間だったらな。こいつはこの世に魔術を広めたオリジナルの魔術師なんだよ。んで、こいつの魔術はほとんどチートなみだ」
「チートではないぞぉ、ちゃんとわしが考えた魔術だぞぉ」
「おめぇが魔術を自由自在に使えるのがチートつってんだよ」
イフリートと老人の口論が段々激しくなっていくさなか俺はただ黙ってることしか出来なかった。
「それは違うんじゃ!だからのぉ~…………おぉ忘れておった、陰よお前はこれからどうすんじゃ?」
いきなりきた質問に俺は声が裏返りながらもはっきり言った。
「も、もちろん皆を助ける」
俺の祖先と言われた陽は大笑いしていた。俺の声が裏返ったことにか、俺の言った言葉のどっちに対しては分からなかったが陽は笑った。
「な、なんで笑うんだよ」
俺は焦りながら陽にいいよる。
「ひぃーはははっ…わ、わしの子にしては、できすぎていてな」
腹を抱えて笑いながら言ってきた。そのあと段々「い、息が…」などと言って最終的にむせて、笑いがとまった。
「ゲホゲホッ…あーごほん、ならばイフリートの力を開放させよう」
俺は陽が何を言ってるのか分からなかった。
「分かったよ。んで、俺はこいつに力を貸せってことだよな?」
「そうじゃ」
イフリートがまた溜め息をした。また、俺だけが取り残されていく。
「えーと、どういうこと?」
俺が率直な質問をすると、意外にもイフリートから答えが聞かされた。
「こいつは、今までのことを知ってんだよ」
「今までのこと?」
「あぁ、多分望美が死んだ時のことから知ってると思うぜ」
ということは、もしかしたら望美は死ななかったかもしれないということか。
陽の方を見ると走って逃げる態勢に入っていた。
「大丈夫だ怒ってねぇよ」
少しは怒りがあるかもしれないが、この事件が起きないとずっと静香先輩に頼ってばかりで、静香先輩の悩みも知らないままだった。次は俺が周りの人を助けるんだ。
「良かったぁ~陰も成長してるのぉ。イフリート、この戦いが終わったら開放してやるぞぉ」
「………いいのかよ。まぁ、俺はそっちの方がいいんだが」
その後、陽がイフリートの前に立ち、手のひらをイフリートの胸にのせた。
「漆黒より迷いし魂の居場所はここにある」
陽の手のひらが白く光だす。
「汝は我に従い故郷へと戻ってこい」
一つの赤く光るガラスの破片がイフリートに突き刺さった。
「これで、やっと元通りになった。待ちくたびれたぜ、まったく」
イフリートの動作や言葉が、俺を苦しめているような気がした。
「やはり、陰には早かったかのぉ~」
「ケッ、貧弱だな」
上からなにかに押されている気がする。しかし俺の上にはなにもなく、その力はイフリートが動くごとに、話すごとに強くなる。
ついに耐えきれなくなり、地面に突っ伏してしまう。目の焦点が定まらなくなり、汗がでてくる。
「ハァ…ハァハァ……んっ、ハァ…」
息が切れていく。
「もう、でるかのぉ」
そう言って陽は、俺の両目を手で覆った。
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気持ち悪い、その感情で目を開けると陽の顔と静香先輩の顔があった。隣には龍刃先輩が寝ている。
「うっ、うえっ」
俺は口を手でおさえつつゴミ箱に吐いた。
「大丈夫じゃ、ちょっとした副作用じゃ」
陽が俺の背中をさすりながら言ってきた。
「ありがとう、陽」
「なんじゃ、お前!」
今度は背中をおもいっきり叩かれた。
「呼び捨てとはなんじゃ、せめて陽じいちゃんと言ってもらおうかのぉ~」
俺は「はぁ?なんだっていいじゃねぇか」と言いたかったが気持ち悪くて言えなかった。
「あとのぉ、陽じいちゃんといわなかったらイフリートの力をまた制限するから」
その瞬間、頭の中で「ふざけんな!」という声が聞こえた。そのせいでよりいっそう気持ち悪くなる。この気持ち悪さが速く終わるためだ。
「……分かったよ、陽じいさん」
「まぁ、いいかのぉ」
楽しげに笑いながら、俺の背中をさすってくれた。
「あんた、なんかあったの?」
いつもは聞こえないはずの声が聞こえた。紅だ。
「なんだよ」
小声でいいながら手錠の方を見ると、手錠は赤くなり、紅はいつもの黒いセミロングから真っ赤に染まった髪になっていた。




