第57話 私と私のキャンペーン(12)
「やめろ、また今度聞いてやるって言っただろ」
老人の私が静かに立ち上がる。
「それは、未完成だ。感想文の朗読みたいなものだ」
私が胸に十字を切る。
「また今度、遊ぼうねって約束するから」
私が手を組み天を仰ぐ。
「それで私の罪と罰の帳尻合わせが出来るとでも思ってるのか」
老人の演技は止まらない。
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「守護福者降臨」
俺のきゝ腕が右なのか左なのか、未だに論争が続いている
あの時代、左右正しく撮影する機材が無かったわけじゃない
ビリーザキッドは小柄で、既製品のシャツは大き過ぎたから
女物の服を着ることが多かったと言われている
写真で残るその姿、銃は左腰に、シャツの合わせ目は右前で
右だ左だと争う者は、同じ写真を根拠に真逆の解釈を主張する
だが、大事なのは、そこじゃない
ビリーは、身だしなみに気を遣う洒落者だったと言われている
そんな伊達男のビリーが女物のシャツを着るなんて、おかしくないか?
オマエなら分かるだろう。
ビリーは女物のシャツを着たかったんじゃないかって
男の身体に女の心
それは、まさしく反転したオマエの姿
オマエがビリーのように振る舞えるなら
自分を偶像化する大衆の賛美を厭い
善と悪、強者と弱者の区別なく、孤高に矜持を貫けるなら
オマエの我欲は時空を超える「9発目の弾丸」(ピカレスクロマン)となるだろう
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『興味深い解釈だが、結論ありきの考察感が否めない。演技としても苦しいな。織部ちゃんの話の後じゃあ、誰が何をやっても楽しめない』
老人の私の身体は塵芥に変質し、崩れて、落ちて、溶け消えた。
残念だが、感傷に浸っている時間はない。
4人を送り出し、決闘が始まってしまう前に、何もかも終わらせなくてはならない。
「君の御祖父様は呪法をつかって、どこかへ行ってしまったのかい」
因獄ちゃんは、どうしても設定から卒業できないようだ。
「過去の亡霊が有るべき場所に帰っただけです」
大きな手が私の背中を優しく撫でた。
「調君、我々は、これから決闘に臨むが、死にに行くわけではない。主義主張のために生きるだけだ」
莞爾と笑って織部先輩は続ける。
「だから、主義主張のために死ぬなどと、決して考えてくれるなよ」




