第56話 私と私のキャンペーン(11)
「ターンエンド」
『バニラ』の暴走は終わり、『時任 永遠』は第三階梯に進んでいる。
これをもって勝利条件の達成とするコミュニティも多いが、我がコミュニティは#1のままでの物語の終息を認めない。
老人の私が『ナターシャ』を第三階梯に進め、1発で毒物耐性判定に成功し、無言で私の『カットイン』を促す。
私達『原理主義派』がでっち上げた独自ルール『カットイン』。
皆で楽しむために、誰かの演技に感銘を受けたり、もっと盛り上げられると感じたならば、割り込んで自分も演技してしまうという出鱈目なハウスルール。
「カットイン」
私は宣言し、出鱈目なルールの下、絵空事を語る。
「ナターシャは怪我をした人、病気にかかった人を全員治療してしまって、それからシスターに悪魔祓いされてしまった人達を治療する経過で脱出王ハリーと知り合って、ハリーとシスターは地獄に落ちてしまうのだけれど、ハリーは地獄に落とされた人と一緒に地獄からの脱出に成功して、脱出した先は天国だったのだけれど、勢い余って、天国に居た人たちも連れて天国から脱出してしまって、ハリーが連れて帰って来た皆をナターシャは人も動物も分け隔てなく楽しく治療してしまって、皆、元気に一緒に暮らして、シスターとナターシャは親友になって悪魔達を仲良く保護して、教師Aが悪魔達に道徳の授業を受けさせる。悪魔達が授業をサボろうとしても教師Aのパートナーが監視しているので、真面目に授業を聞かないといけない。悪企みをする者は一人も居なくなって、幸せな世界が訪れました」
おままごとのような、ご都合主義が山盛りの結末を語って、それでもプレイングマットは消えない。
「私の名乗りが終わってないからな」
「物語は結末を迎えたのだから蛇足だろ。後で聞いてやるから我慢しろ」
名乗らせてはいけない予感がして遮る私を無視して、老人の私が続ける。
「頭数は合わせないといけないだろ。オマエが撃ったのは8発目までだ。これから4人、決闘に向かうなら弾丸は9発必要だろう」
「人を鉄砲玉扱いするな。それに織部会長は決闘なんてしない……」
「カットイン」
私の反駁に割り込んだのは織部会長だった。
「私の父が与えられた絵札は『愛して殺す印地打ち』だった。決闘を始めるまでの手順は確立されて、その先を探らなければならなかった。ただダイスを振るだけでは敗北する。闘えない国士として追い詰められた父は、絵札に書かれた物語を手掛かりに一つの推論に辿り着いた。後から代償を支払うのではなく、先に対価を提示しなければならないのだと。決闘の場で父は誓った。勝利を与えてくれるなら我が息子と飼い犬の命を差し出すと」
老人の私がポケットを叩いて何かを探している。
育ちが悪いから他人の話を行儀よく聞くことが出来ない。
私もそうだ。酒でも飲まなきゃ、こんな話、聞いてられない。
「結果は機密事項となったが、国士院内では公然の秘密だった。父は国士として決闘する資格の永久剝奪を宣告され、私は、この学園に進学した。私は国士の宣誓をしない。しかし、闘わないわけではない。対話と相互理解。非暴力・不服従。私は私のやり方で、彼らと向き合わせてもらおう」
戦争のない終末世界で、彼も一人の国士だった。




