第41話 怠慢プレイ(1)
老人の私の手番は『ナターシャ』へのコスト消費から始まった。
隣に配置している『教師A』は苦しみや悲しみを漏らさないから仕方が無いのだが、違う構成にするべきだったのではないかと物申したくなる。
そんな私の内心のモヤモヤを他所に、老人の私は淡々と手を進める。
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『病院送りにしてあげる #4』
刺したくて堪らないというのに、思うようにならないものだ。
辺境の寒村では四則演算はおろか、読み書きができるものも珍しく、自分の名前が書ければ自慢できるような有様だ。
注射器という宝具を操り、子ども達に針を刺しまくって泣き叫ぶ姿を堪能するためには、王都に行って高い金を払い、医術を学ばねばならぬというが、もちろん、この辺境の寒村では、村長の息子でさえ、そんな望を叶えることなどできはしない。
さて、どうしたものかと思っていた時に転機は唐突に訪れた。
戦争が始まったのだ。
この辺境の寒村にも徴兵の割り当てがあって、働き盛りの男たちが引きずり出され、その絶望に染まった顔を物陰から眺めて楽しんでいたのだが、風に吹かれて飛んできたビラを見て飛び上がるほど驚いた。
看護卒を募集しているというのだ。
志願した者は無償で医術を学ぶことができ、修了したのち従軍して負傷した兵士の治療にあたるのだという。
すぐさま広場に飛び出して徴募官の足にすがりつき、看護卒に志願した。
「まだ、君は子どもだろう」と徴募官は訝しんだのだが、以外なところから助け舟が出た。
「身体は小さいですが、娘はもう18歳です。どうか連れて行ってください」
無表情な両親が立っていた。
それから、あれよあれよという間に時は過ぎ、気付けば野戦病院とも呼べぬ塹壕の中に居た。
王都の看護卒養成所では、注射器どころか聴診器の扱いを学ぶこともなく、ただ、傷口の消毒と止血の方法、包帯の巻き方を学んだだけで前線へ放り出されたのだが、メスで切り開き、針と糸で縫い合わせるようになるのはすぐだった。軍医殿に砲弾が直撃して散り散りバラバラになるまでに、助手として見て覚えた手技を振るわなければ、他に出来る者など誰もいなかったのだ。
後任の軍医の派遣は勿論のこと、麻酔薬の補給も無い中で、血を流し、もがき苦しむ兵士達を前にして、躊躇うことなく切り開き、鉛の弾を取り出して、素早く丁寧に縫い合わせ、消毒液の激痛に顔を歪める兵士達を微笑みを浮かべて抱きしめて「病院へ搬送されるまで、もう少しの辛抱よ」と有りもしない希望に縋らせてやる喜び。
時には塹壕から飛び出して、銃弾に倒れた兵士を引きずって戻り、母の名を呼びながら気を失いかけている兵士の頬を張り飛ばし、目を覚まさせてから、消毒液を吹きかけて悶絶させてやる至福の時。
全てが滑稽で、面白くて、毎日が充実していた。
英雄がやって来る、その時までは。
名前 ナターシャ
年齢 15(18)
特技
慈愛の微笑み(+2D)
本人は戦争が終わってしまえば、こんな機会は二度とはないと、大事な玩具を掻き集めて喜色満面なだけなのだが、前線で戦う兵士達にとっては、銃弾が飛び交う戦場で、我が身を顧みず負傷兵に救いを与える聖母の微笑みと尊ばれている。
料理や裁縫と何が違うの?
他人の痛みや苦しみ、出血などに対して恐れがないため、外科手術の模倣行為に躊躇いがなく、経験の浅い正規の軍医よりも素早く的確な処置が出来る。
境遇
身近に接する両親には打算的な行動を隠しきれず『悪魔憑き』ではないかという疑念を深められていた。志願兵を出した家は徴兵を免れるため、両親は長男の身代わりとして娘の年齢を偽って申告した。
特記
苦しみ、悲しみを隠さない他の victim が規定位置に進む時、この victim もコストを無視して規定位置に進む。
この victim が規定位置に進む場合、銃砲弾の回避判定をしなければならないが、失敗(1D≦3)しても特技で付与された回数だけダイスを振りなおすことができる。
1D1~3 病院送りにしてあげる #9 へ物語は続く
1D4~6 病院送りにしてあげる #10 へ物語は続く




